「そんなんもろたら立ちションもできんようになる」。元プロ野球選手で「世界の盗塁王」の福本豊さんは、政府から打診された国民栄誉賞を辞退した後に語ったという

▼30年以上も前の逸話として伝わるが、俺はそんな栄誉が似合うスターではないからというのが本意だったらしい。周りの人から崇められる「天上の星」になることに気がひけたのだろう

▼天上の星は、自身が放つ光だけでは輝けない。周囲の「暗闇」の助けが必要である。それは人生という舞台も同じで、主役である「星」は無数の脇役がいてこそ輝きを増す

▼ノーベル賞、文化勲章などの報道が先月から続き、紙面には晴れやかな「星」たちの笑顔が並ぶ。自身が信じた道を一途に歩み、輝かしい実績を上げた姿はどれもまぶしい

▼まばゆい光を放つ星を目にすると、華やかな世界とは縁遠い身なので、輝く星よりも名もなき人たちの方に思いをめぐらしてしまう。弱くて小さな普通の人々にスポットを当てた中島みゆきさんの名曲「地上の星」の歌詞がふと頭に浮かぶ

▼風の中のすばる、砂の中の銀河、草原のペガサス…。〈見送られることもなく〉〈誰も覚えていない〉無数の地上の星たちは、立ちションできる気楽さの中、胸の奥に小さなプライドをしまいながら必死にきょうを生きている。(稲嶺幸弘)