ベトナム戦争当時、米兵たちはベトナム人を「gook(グック)」と呼んでさげすんだ。それは「土人」という意味に近い蔑称である。かつて在沖米兵も沖縄人を「グック」と呼んだ。そこには「外地」における支配と収奪の対象という意味が多分に含まれている。

桃原一彦(沖縄国際大学准教授)

 大阪府警機動隊員が発した「土人」「黙れ、シナ人」にも、同様の意味合いがあるだろう。沖縄人を、言葉を発する主体として認めない、対等な人間として扱わないという了解が含まれている。「グック」のような表現は戦場と化した現場で重宝される。「殺すことをちゅうちょしてはならない。奴らは人間ではない」。戦場とは、そのような狂気が充満するところ。

 沖縄人は、沖縄戦と米軍統治を通してそのことをよく知っている。よって、高江で非人間化しつつあるのは機動隊員たちである。彼らは自らの非人間性を沖縄人に投影し、精神的な均衡を保つことで、植民地を鎮圧する「兵士」となっている。

 今回の発言をめぐる問題の根幹は、差別と暴力が何度も衝突する現場を沖縄に集約させ、閉じ込めている日本社会および日本人にある。非人間化の状態を放置し続けている、その圧倒的マジョリティーの日々の行為が支えている差別構造こそが問題なのである。