賃金の下落に合わせ年金支給額の抑制を強化する「年金制度改革法案」が衆院本会議で審議入りした。安倍晋三首相は「年金制度に対する若い世代の信頼を得られる」と今国会成立に意欲を見せる。

 同法案の最大の目的は、少子高齢化と低い経済成長率で危ぶまれる年金財源の安定化。(1)現役世代の賃金が下がった場合は必ず減額する(2)現役世代の減少と平均余命の伸びを考慮して抑制する-という二つの支給抑制策が柱だ。

 一方、野党は同法案を「年金カット法案」と称して批判する。民進党の柚木道義氏は本会議で「何人もの高齢者が、年金をこれ以上減らされたら生活できないと言っている」と語気を強めた。

 年金は、現役世代が負担する保険料と国費で賄う。支給抑制が必要とする根拠の一つが、年金支給水準の高さだ。高齢者の生活実感と異なるとして、改革審議の焦点になっている。

 支給水準は、現役世代の収入を分母とし、年金額を分子とする計算式「所得代替率」で表され、法律では50%以上の確保が保障されている。2014年度の代替率は62・7%と高い。

 ところが民進党の長妻昭氏は、この代替率が現実の高齢者の実態を反映していないと指摘した。理由として、分母となる現役世代の収入が、税や社会保険料を除いた「手取り」であるのに対し、分子の年金額は両者を含めた「額面」となっているため、おのずと高い数値が出るという。

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 現行計算式で62・7%の14年度代替率は、分子と分母を「手取り」や「額面」でそろえるとそれぞれ5割になる。法律が定めた年金水準の最低ラインに近く「これ以上減らされると生活できない」という高齢者の声と重なる。

 こうした年金支給水準の問題は、支給抑制を柱とした同法案が成立した場合、将来的に多くの高齢者が、事実上の低年金に陥る可能性を示唆している。

 今国会では、年金に関するもう一つの法案も審議された。

 年金の受給に必要な加入期間を現行の25年から10年に短縮する「年金機能強化法改正案」で、衆院厚生労働委員会で野党も賛成し可決された。

 加入期間が足りないために無年金となっている高齢者の救済が目的で、成立すれば、来年10月にも約64万人が新たに年金を受け取れるようになる。

 ただし、受給にはいずれにしても10年の加入期間を要するため、救済が届くのは無年金者の一部に限られる。また、支給額は納付総額に応じて決まるため、加入期間が短ければ、低年金にとどまる可能性が高い。

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 暮らせなければ年金の意味はない。現役世代の年金不信は、その点にこそあるのではないか。

 無年金・低年金者の増加と納付率の低迷。加えて高齢者の生活保護受給増加などの状況を考えれば、現行制度は破綻状態といえる。

 老後の生活をどう保障するか。国会は、根本的なあり方こそ論じるべきだ。