「高倉健という人物ほど、ドキュメンタリーに向いていない人物はいない」と、ある映像ディレクターは言う。では何故、日比遊一監督はあえて高倉健を選んだのか。「どんなに大声を出しても伝わらないものは伝わらない。むしろ言葉が少ないから伝わることもある」と健さんは語りかけてくる。

「健さん」の一場面

 いい男だがいかんせん線が細い。そんな青年が背中の厚みを増し渋みと深みを備え悲しみのまなざしを遠くへ向ける様に、いとおしい以外の感情を探すのに苦労する。

 世界の映画界重鎮をとりこにした健さんに一番とらわれたのが監督だったのであろう。「健さん」「健さん」とそれぞれの感情で呼び掛ける声に愛があふれる。それにしても男優さんはずるいな。しわもシミも、すべて魅力に変換してしまうのだから。(スターシアターズ・榮慶子)

◇シネマパレットで11月5日から上映予定