地球温暖化対策の新たな枠組みとなる「パリ協定」が4日、発効した。温暖化を引き起こす化石燃料から脱却し、脱炭素社会の実現を目指す国際的な取り組みが、いよいよ始まる。

 今世紀後半に世界の温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にし、産業革命前からの気温上昇を2度未満に、できれば1・5度に、抑えるのが目的だ。

 各国が自主的に削減目標を掲げて達成を目指し、5年ごとに国際社会の検証を受け、対策を進めることを義務づけている。

 化石燃料文明からの転換を促す取り組みだけに、エネルギー政策だけでなく、暮らしや経済にも大きな影響を及ぼすのは確実である。

 二大排出国の中・米両国が9月に協定締結の手続きを終えたことで、欧州連合(EU)加盟国などが相次いで批准、昨年12月に協定を採択してから1年足らずの異例のスピードで発効にこぎつけた。

 先進国と発展途上国を合わせた190カ国以上が参加する。

 それにしても情けないのは日本政府の対応である。米中などの動きを見誤り、国会承認に向けた手続きが遅れてしまった。

 4日午後も衆院本会議を開き批准案承認を目指したが、環太平洋連携協定(TPP)の委員会採決を巡る混乱で本会議は開かれず、批准は見送られた。

 「温暖化対策への熱意が感じられない」-そう批判されても仕方がないような、ずさんな対応だ。

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 7日にはモロッコで第1回締約国会議が開かれ具体的なルール作りがスタートする。正式なメンバーとして参加するには10月19日までに協定を批准しなければならず、結局、日本政府はオブザーバーでしか参加できないことになった。日本の存在感の低下は避けられない。大失態と言わざるを得ない。

 パリ協定は「地球の転換点」(オバマ米大統領)と位置づけられる重要な取り組みだ。にもかかわらず、TPP審議を優先させ、4日の批准を見送ったということは、国際社会に誤ったメッセージを伝えたおそれがある。

 思い出すのは、国連総会第1委員会で核兵器禁止条約の交渉開始を定めた決議案が採択されたとき、日本が反対票を投じた一件だ。

 国際社会から「核廃絶にも温暖化対策にも後ろ向き」だと見られれば、今後の交渉にもマイナスに作用する。

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 政府や産業界の一部には「温暖化対策は経済成長を妨げる」という考えが抜きがたく残っている。石炭火力発電所の新増設計画が相次いでいることも、日本政府の「本気度」を疑わせる。

 その一方で、パリ協定の発効を見越した企業の動きも活発である。温暖化対策は、経済的に見ても可能性に富む分野であり、核心的な技術開発が進めば日本経済の救世主にもなり得る。

 経済と暮らしの構造転換は避けられない。脱炭素社会の実現に向け、着実に成果を積み上げていきたい。