「南米移民のウチナーンチュの記念写真集である。記念写真は写真の原点なのだ。写された人物の目とその写真を見る人の目が真正面から向き合う」(抜粋)という東松照明氏の言葉が帯を飾る。

嘉納辰彦写真集「もうひとつのウチナー」(ボーダーインク・3240円)

 ボリビアにあるコロニアオキナワというオキナワ村は「もうひとつのウチナー」としても有名だ。本書はそこで暮らすウチナーンチュ(海を渡った島人)とアルゼンチン、キューバのウチナーンチュの記念写真集である。

 家族とともに、友人とともに、親族とともにそれぞれの家や畑など生活の場で撮られた写真は自然でありながら、その存在感が大きく印象的である。巻末のデータにはそれぞれの名前、出身地と移住年が記されているが、そこにもサシンヌジャー(写真家)嘉納辰彦氏の南米移民の方々一人一人への思い入れが感じられる。

 嘉納氏は南米のウチナーンチュだけでなく、祭祀(さいし)の写真や風景、人物など実に多くの写真を撮り続けているカメラマンである。ボーダーインクはこれまでにも口絵や表紙の写真、共著本『島からの風に吹かれて』の出版などでもお世話になっているのだが、実は単著としては初の写真集であった(その後、未來社から写真集を出版)。

 本書はモノクロの写真集であるが、ダブルトーンという2色を使った印刷になっている。これにより黒だけでは表現できない深みを出したり、セピア調などの独特の表現が可能になった。

 写真のデジタル処理は嘉納氏自らが行っており、印刷所の刷り出しにも立ち会っていただいた。写真集の出版は写真表現の再現という難しい部分があるし、値段的にも高めに設定せざるを得ないのが実情だ。しかし、そこには撮り手の熱意と尽力が写しとられているように思える。ケータイ写真など以前にも増して写真が身近になった今、改めて写真集という形で写真を見ることもお勧めしたい。(池宮紀子・ボーダーインク編集者)