反米、親中で、かつ親日。6月に就任したフィリピンのドゥテルテ大統領が独自外交の道を突き進んでいる

▼オバマ米大統領を「地獄に行け」とののしり、「米国と縁を切る」と宣言。中国の習近平国家主席には「われわれの関係は春だ」と語り掛け、南シナ海の領有権争いを棚上げして巨額の経済協力を得た

▼同時に安倍晋三首相にも東・南シナ海問題で「必ず日本側に立つ」と明言した。日本政府は戸惑っているように見える。援助獲得のため日中をてんびんにかけていると分析し、せっかく好意を寄せてもらったのに米国との「橋渡し役」になるという程度の方針のようだ

▼安倍氏は昨年、日本を代表して訪れた米議会で母語ではなく英語で演説をした指導者である。リンカーン元大統領の愛称を念頭にしたとはいえ、自分の名前を米国風に「エイブ」と読まれても「悪い気はしない」とまで言った

▼ドゥテルテ氏の言葉は対照的だ。「私は独立国家の大統領だ。植民地としての歴史はとっくに終わっている。国民以外の誰からも支配を受けない」

▼国内で麻薬犯罪の容疑者殺害を容認していることや、ヒトラーと自身を重ねた発言には反対せざるを得ない。ただ、外交には無限の可能性があることを教えられる。日本は、「親米」「反中」という呪文で自らその扉を閉ざしている。(阿部岳)