8日の投票日が迫った米大統領選で、民主党候補ヒラリー・クリントン氏と共和党候補ドナルド・トランプ氏が接戦を繰り広げている。日米安全保障やオバマ政権のアジア重視政策を引き継ぐ考えのクリントン氏に対し、駐留費負担増を求め、在日米軍の撤収にまで言及するトランプ氏。どちらになっても逼迫(ひっぱく)する米財政の下、軍事費の見直しは避けて通れないとみられる。一方、共和党から民主党に代わり、沖縄の基地問題解決に期待が集まったものの、オバマ氏の8年間で沖縄の基地負担は減らず、逆に日米の軍事一体化が進む形となった。新大統領の下、日本、沖縄の米軍基地政策や日米関係にどのような影響が出るのか。両氏の発言などを振り返り、まとめた。

共和党のトランプ氏(左)と民主党のクリントン氏(AP=共同)


■クリントン氏は辺野古移設容認

 女性初の米大統領を目指すクリントン前国務長官は、オバマ政権が掲げたアジア重視戦略を継承する考えだ。これまでの選挙戦で直接「沖縄」には触れていないが、米軍普天間飛行場を名護市辺野古へ移設する日米合意を容認する立場は変わらない。

 オバマ大統領の1期目で国務長官を務めたクリントン氏。「変革」を掲げたオバマ政権に、県内からは辺野古案見直しへ期待の声も出たが、クリントン氏は就任後初めて来日した2009年2月、在沖米海兵隊のグアム移転と普天間の辺野古移設を明記したグアム移転協定に署名した。署名後、「米軍再編をさらに進めることができる」と辺野古移設方針を鮮明にした。

 日本で一時は「県外」を掲げた民主党に政権が変わっても米政府は辺野古案を堅持。12年にはクリントン氏もメンバーの日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、辺野古が「これまでに特定された唯一の有効な解決策」との共同文書を発表した。

 今年9月には、訪米した安倍晋三首相がクリントン氏と面会し、辺野古違法確認訴訟一審判決での国勝訴を報告。辺野古推進を強調する首相にクリントン氏は同意する意思を伝えた。大統領選での事実上の公約となる政策要綱でも「日本に対する歴史的な責務を果たす」と明記し、現在の日米安全保障条約を継承する立場を強調した。

■トランプ氏なら白紙? 真意は不明

 一方、不動産王のトランプ氏は、共和党の指名を争っていた今年3月、米軍駐留費の負担増を日本側に求め、応じない場合は「米軍の撤退もあり得る」との考えを表明した。

 米国の経済力が弱まる中、多額の軍事費を掛けてアジア太平洋地域に米軍のプレゼンスを維持するのは割に合わず、他国防衛ではなく自国の発展のために予算を使うべきだとの考えだ。

 これまで日本の基地政策で共和党、民主党による違いはほとんどなかった。トランプ氏が大統領に就任すれば、「安保ただ乗り論」を同盟国に対してさらに強調する可能性もある。実際、米国の安全保障の専門家の中には東アジアや中東など紛争の火種がある地域へ米軍の地上部隊を駐留させることを疑問視する声もある。

 米国務省内には、巨額の予算を要する辺野古新基地建設とグアム移転をトランプ氏が白紙に戻すのでは、と不安視する声も聞こえ、日本政府もトランプ氏の真意を測りかねているのが現状だ。(政経部・大野亨恭)