韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が政権発足以来、最大の窮地に立たされている。ソウル中心部では5日、10万人以上が集まり、朴氏の退陣や真相究明を求める抗議集会が開かれた。韓国憲政史上初めての現職大統領の捜査も日程に上っている。国民の怒りは収まらず、混乱の収束も見通せない。

 疑惑は大きく分けて二つ。朴氏の40年来の親友、崔順実(チェスンシル)容疑者(60)の国政介入と、大統領府と共謀して崔容疑者が実質的に支配する2財団への拠出を企業に強要した疑いである。朴氏の関与が焦点だ。

 国政介入では朴氏が機密書類を崔容疑者に渡して意見を聞いていた事実を認め謝罪している。演説草稿などを流し「添削」もさせている。だが全容の説明には程遠い。政策決定に影響を与えたのか。大統領府前秘書官の容疑者は「大統領府の分厚い資料を日常的に崔容疑者に手渡していた」と供述している。朴氏には説明責任がある。

 大統領府と崔容疑者が2財団に対し企業に拠出金を強要していた事件では、大統領府前首席秘書官の容疑者が財団設立は朴氏の指示で、資金集めの状況を随時報告していたと供述。朴氏が財団への増額を企業に指示した疑いも浮上している。供述通りであれば、朴氏の責任は免れない。

 朴氏は自らへの捜査の受け入れを表明したが、自身の口から真実を明らかにしてもらいたい。謝罪会見は一方的で、質問を受け付けなかった。国民の知りたいことに答えない態度は不誠実で、不信感を募らせるばかりだ。

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 なぜ、朴氏は一私人の女性とかくも深い関係を結ぶようになったのか。朴氏の生い立ちが背景にありそうだ。朴氏は崔容疑者について「最も苦しかった時に守ってくれたため、警戒心を緩めてしまった」と明かした。2人の関係は1970年代にさかのぼる。朴氏の母親が凶弾に倒れ、大統領の父親も暗殺された。宗教家であった崔容疑者の父親を介してつながったという。

 朴氏は「不通」と評されてきた。独善的で周囲と意思疎通が図れないという意味だ。その代わりを崔容疑者が務めていたというのであれば国民への裏切りである。

 朴氏の支持率は急降下し、5%まで落ち込んでいる。1年4カ月の任期を残し、すでにレームダック(死に体)である。野党系の学者を首相に据え「挙国中立内閣」で難局を乗り切る算段だったが、政権内でも相談のない決め方に逆に反発が広がっている。

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 韓国の内政の混乱が北東アジア地域など外交へ及ぼす影響は避けられない。

 昨年末に「従軍慰安婦」を巡る日韓合意など改善に向かいつつある日韓関係にも影を落としかねない。核・ミサイル開発を押し進める北朝鮮の挑発、米軍の最新迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備決定による中韓関係のきしみ、12月には朴氏が初来日し、日中韓首脳会談が開かれる予定だったが、不透明になった。

 朴氏が一刻も早く真実を語ることが結局は内政の混乱を長引かせず、外交への影響を最小限に抑える道である。