■沖縄にとってチャンス 川上高司拓殖大教授

 鳩山由紀夫政権が普天間飛行場の移設問題で紆余(うよ)曲折したことで、オバマ政権にとって辺野古は絶対に動かさなくてはいけない問題だった。県知事が変わって地元の意向が180度変わったので、本来なら見直しの機運が高まるはず。だが鳩山元首相に裏切られたというオバマ大統領の感情のねじれが8年間続いた。

川上高司・拓殖大教授(安全保障論)

我部政明・琉球大教授(国際政治学)

川上高司・拓殖大教授(安全保障論) 我部政明・琉球大教授(国際政治学)

 普天間移設とパッケージとしてきた嘉手納以南の基地返還が切り離され、先に返還されるものは返す決定がなされ、少しずつ進んだのは評価できる。東日本大震災で米軍が協力し日米の親交は深まった。オバマ政権は辺野古にこだわったが、次の大統領では考え直すきっかけができるかもしれない。

 クリントン氏はオバマ政権の政策を踏襲するといわれているが、米軍の世界戦略を練り直すなら、当然在沖米軍基地の問題も考え直される可能性がある。現政権の歳出削減を継続するかも分からない。米海兵隊第31海兵遠征部隊とは別の部隊が東シナ海を担当するプランもあるとの話も聞く。

 トランプ氏が在日米軍撤退に言及したのは、少しでも日本から援助を得る駆け引きだ。日本は防衛負担をあまりしていないと思っているので、大統領に就任後、きちんと説明を受ければ認識は変わるだろう。

 ただ、彼のスタイルは変わらず、日本から金銭的な利益を得たい。防衛に関する予算に限らず、貿易赤字や不動産投資なども含めて。すぐに撤退はないが、それに日本が応じない場合は引く可能性は否定できない。

 大統領選は沖縄にとってチャンス。米国は地元の声を重視する。クリントン氏の場合は、現政権の延長線上なので議会などに対するロビー活動を。トランプ氏だと誰に当たれば効果的なのかなど、よく検討が必要。慎重かつ大胆にアプローチするといい。(安全保障論)(聞き手=東京報道部・上地一姫)

■中国にらみ米軍再編か 我部政明琉球大教授

 オバマ大統領は2009年の就任当時、前年のリーマンショックによる金融危機で頭はいっぱいだった。沖縄問題は06年にブッシュ政権下で辺野古現行計画で合意しており、オバマ氏にとっては既に終わった話だった。日本の政権が民主党に代わり、普天間問題が再浮上。米国はフラストレーションがたまり、逆に辺野古の日米合意を推し進める力となった。

 一方、12年に交代した安倍晋三政権は合意を守る点は米側に都合いいが、右派的体質、それを支える右派的ナショナリズムを危険だと感じるようになった。米国は、安倍政権を支えることで政権をコントロールしようと考えた。安倍政権が進める辺野古は受け入れて無用な問題を生まず、一方で対中国問題では日本が暴走しないようブレーキをかけることを狙った。日本の問題にオバマ氏自身、情熱を持っておらず、国務省や軍に任せてきた。

 軍事的な話では、オバマ氏2期目の12年ごろから、遠征能力が高まる中国に対し、沖縄の基地は近すぎるとの指摘が出始めた。今後、この議論は避けて通れず、次期大統領はこの点を踏まえて米軍の再配置を考えることになる。

 クリントン氏は、アジア太平洋を重視するオバマ氏の政策を引き継ぐ。17年以降は、より関係性を深める中国をにらみながら米軍の具体的な配置、沖縄駐留の軍事的必要性を考えることになる。民主党という面では、1996年に普天間返還を決めた実績があり、大幅なギアチェンジ、つまり辺野古の見直しができる可能性はある。

 一方、トランプ氏は防衛費の負担増などを主張しており、大統領になれば日米関係に障害が生じるだろう。トランプ氏の意向が分からず、さらに、日本側にトランプ氏へのチャンネルがなく、混乱するだろう。(国際政治学)(聞き手=政経部・大野亨恭)