大方の予想を覆す歴史的な選挙となった。「怒れる白人層の反乱」であり、「既成政治」への不信感の表れである。

 米大統領選が投開票され、共和党の実業家ドナルド・トランプ氏(70)が大接戦の末、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(69)を破った。

 女性蔑視やイスラム教徒の入国禁止など排外主義的な暴言を繰り返し、共和党の重鎮でさえ、トランプ氏を支持しないと表明する中での当選である。

 格差が拡大し中間層からこぼれ落ちた有権者の不満をすくい上げ、さらに支持層を広げたとみられる。

 政治経歴を持たない暴言癖のある異端の大統領が自由社会のリーダーとして世界に向き合うことになった。来年1月20日に就任するが、世界各国に激震が走っている。世界がリーダー不在の大変動の時代に突入するかもしれない。

 現職のオバマ大統領はすでに2013年の会見で「米国は世界の警察官ではない」と表明。トランプ氏も同じ発言をしており、「アメリカ・ファースト(米国第一)」を掲げた。米国が世界のリード役から降り、内向き志向を強めるのは間違いない。

 政策論争がなく、互いに非難中傷し合う選挙戦だった。

 クリントン氏は選挙戦の終盤に私用メール問題が再び米連邦捜査局(FBI)の捜査対象とされたが、終始優勢を保っていると伝えられた。

 だが、クリントン氏は「ワシントン政治」を牛耳るエスタブリッシュメント(支配層)のイメージを最後まで払拭(ふっしょく)することができなかった。

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 トランプ氏は日米関係に触れ、「安保ただ乗り」論を批判した。「米軍の駐留経費負担を大幅に増額しない場合は米軍を撤退させる」「中国や北朝鮮への対抗手段として核兵器保有を容認する」とも言っている。

 日本の歴代政権が自明のこととしていた日米安保が流動化する可能性がある。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設問題を見直す絶好の機会にすべきだ。未知数のトランプ氏へどう対応し、どう働き掛けるか。沖縄も検討を急がなければならない。

 日本政府が前のめりの環太平洋連携協定(TPP)もトランプ氏は脱退する立場だ。

 TPPは各国のGDPの合計が85%以上になった段階で発効する。米国のGDPは60・4%を占めており、米国の承認なしには発効しない。

 日本も国会採決を急ぐことなく、米国の出方を見極める必要がある。

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 世界の先進国は激しい経済格差に苦しめられ、社会が分断される共通の課題を抱えている。移民に仕事を奪われていると、移民排斥の言動をためらわなくなった。

 フランスの極右政党、国民戦線(FN)は「反イスラム」「フランス第一」などトランプ氏と同じような主張を掲げる。来年4~5月に大統領選(2回投票制)を控えており、ルペン党首はツイッターでトランプ氏を祝福した。

 米大統領選の結果が、世界各国で排外主義を勢いづかせ、さらに広がるきっかけにならないかを強く危惧する。