ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」に、迷い込んだアリスが、進むべき道を出会った猫に尋ねる有名な場面がある

▼猫はこう答える。「それは君がどこへ行きたいかでほぼ決まるな」。どの道を選ぶかは己の意思次第ということなのだろう。子ども向けの物語だが、人生訓のようでもあり、味わい深い言葉に聞こえる

▼一体、米国、そして米国民はどこに行こうとしているのだろうか。きのう投開票された米大統領選で下馬評を覆して共和党候補のドナルド・トランプ氏が当選確実との報道に、多くの人が「まさか」と口にしたはずである

▼同氏は移民排斥など過激な主張に加え、次々明るみに出た女性蔑視発言で支持率は急落。主要米紙も「反トランプ」を打ち出し、事前の情勢調査でも民主党候補のヒラリー・クリントン氏優勢が伝えられていた

▼トランプ氏勝利の細かい分析はこれからだが、既存の政治が米国の衰退を招き、放置され続ける「富の偏在」に対して有権者の不満が爆発した結果との見方も出ている。米国が抱える重い「病」を見る思いである

▼トランプ氏は日本などの同盟国に米軍駐留経費の負担増を求めることにしており、日米関係の変化も予想される。党派や人種間の分断を煽(あお)った同氏の勝利は、道に迷った超大国の悩める姿を世界にさらけ出した。(稲嶺幸弘)