沖縄県内で例のない公立保育園の全廃を目指す八重瀬町に対し、全廃計画の中止と協議を求める住民ら2団体が2016年10月8日、町中央公民館で「公的な保育施設と役割」をテーマに座談会を開き、情報量で優位性のある公立園を軸とした保育連携の在り方を考えた。約180人が訪れた会場の質問などを基に、識者は住民、民間園、行政でニーズを話し合う環境があるかどうかが公立保育の役割や存在感を左右すると分析した。一連の議論をまとめた。(南部報道部・堀川幸太郎)

公立保育所全廃を巡り、住民ら2団体が開いた第2回座談会=2016年10月8日、八重瀬町中央公民館

知名孝准教授

公立保育所全廃を巡り、住民ら2団体が開いた第2回座談会=2016年10月8日、八重瀬町中央公民館 知名孝准教授

 座談会は、保護者ら「町の子育てを考える会」と、民間園長の「町法人園長会」が主催した。県子どもの貧困実態調査に携わった県子ども総合研究所の所長、堀川愛さんが進行役を務め、沖縄国際大准教授の知名孝さん=精神保健福祉学=が民間園長に質問する形で進んだ。

 官民の保育連携は現場の「ヨコ」と就学先との「タテ」の二つの方向性に分けて考え、公立保育の優位性も示した。事前に出席を求められていた比屋根方次町長は姿がなかった。

◆ヨコの連携=貧困や虐待対応 タテの連携=複眼的な見守り

 公立・民間園の「ヨコ」の連携は、障がいや貧困、児童虐待、育児放棄など多様な保育ニーズに対応する。

 本来、公立園は(1)乳幼児検診など個人情報が扱えるため「気になる子」や家庭を見つけやすい(2)同じ行政側として国の保育制度変更や、児童相談所など専門機関の最新情報が集まる-ため、民間園に対する情報の優位性がある。

 豊かな情報を持つ公立園の保育士は公務員で民間園よりも処遇がよいため、長年にわたる実践経験の蓄積や地域傾向の分析ができる。経験の乏しい民間園の指導や、ニーズを先取りするサービス展開で保育水準の底上げに貢献する。

 小学校入学を控えた5歳児保育の中で発達などが「気になる子」について、保育園から学校に情報を受け渡すのが「タテ」の連携だ。学校生活の中での無用なつまずきを防ぐことができる。特に、八重瀬では保育園から入学する子が全体の5割を占め、県平均の2割を上回るため重要。ただ、同じ子をわんぱくとみるか、気になる子とみるかは、5歳児保育の経験が数年~20年以上と異なる園によって、ばらつく。

 複眼的に子どもを見る環境づくりが欠かせないが、個人情報保護のハードルが高い民間園だけでは担えない。公立園が介在することで理想的な状態になる。

◆話し合いからニーズ発掘を 知名孝沖国大准教授(精神保健福祉学)

 精神保健福祉士として子ども向け心療内科クリニックに勤めていたころ、訪れる子の中には、両親の離婚や子育ての自信のなさなどが影響しているケースもあった。が、病院では既にほころんだ家族を何とかするのは難しい。

 ほころぶ前に保育園で(保育指針に定める)世帯支援ができていたらと思う。タテの連携の話があったが、小学校も中学校も特別支援学校も、子どものつまずきを防ぐために保育園の時点で取り組んでほしいことのニーズはある。

 会場からも質問が出ていた通り、公立園の役割が見えないという疑問は、町のいろいろな立場の人で具体的な保育ニーズについて意見交換する場が乏しかったことから生まれているのではないか。

 児童福祉などの福祉サービスは昭和の時代、行政が模範として始め、見習った民間の参入が進んだ。セーフティーネットに役割を変えた今、どんなサービスがあったらいいのか、住民や保育園と話す場を設けるのは行政の仕事だ。

 久々に八重瀬に来たが、道も上等、大きいスーパーもできている。インフラを整えて住民を呼び込もうという町の考えが分かる。でも人が増えた分、ニーズも出てくる。在るべき公立園の形が広まり始めた今、なくしてしまうことの意味を皆で考えてほしい。