ドナルド・トランプ米次期大統領(70)=共和党=が、日米安保、ひいては沖縄の基地問題にどう対応するのか注目を集めている。

 「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げるトランプ氏は、選挙戦のさなか、日本に在日米軍駐留経費の負担増を求める考えを表明した。

 「米国は日本から法外な金を取られているが、われわれには日本を防衛する財政的余裕はない」というのがトランプ氏の主張だ。日本が負担増に応じない場合は在日米軍を撤退させることにも言及している。「誰かが日本を攻撃したら、われわれは救援に駆け付けなくてはならない。でもわれわれが攻撃を受けても日本は助けに来なくていい。こんな取り決めは割に合うだろうか」と日米同盟を疑問視する発言も出た。

 1980年代、日本経済が急成長を遂げ、日米貿易摩擦が激化したとき、米側から出てきたのが「安保ただ乗り論」だった。米国の財政事情が厳しくなると、日本に対して応分の負担を求める圧力が強まり、「安保ただ乗り論」が浮上する。今回のトランプ発言も、その一種と見て差し支えないだろう。

 トランプ氏が大統領就任後、駐留経費の負担増を要求するのは間違いない。日本政府は、どう対応するのか。

 辺野古新基地建設を含めた米軍再編を、地元の意向を無視して推し進める一方で、駐留経費の新たな負担増要求にも応じるのであれば、極めて問題だ。

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 トランプ氏の指摘する「安保ただ乗り論」は事実に当てはまらない。

 日本政府は、米軍基地の光熱水費や日本人従業員の労務費などを「思いやり予算」として負担している。日米両政府は今年1月、2016年度から5年間の総額を約9465億円とする特別協定を締結した。これまでの5年間を約133億円上回る額だ。

 日本側負担を見直すのであれば、米軍普天間飛行場の辺野古移設の見直しと抱き合わせにすべきだ。辺野古見直しによって沖縄の実質的負担軽減を図るその経費として位置づけるのである。

 トランプ氏のアジア太平洋戦略は不透明で、沖縄の基地機能の強化につながる懸念は拭えない。決して楽観視はできない。ただ、実業家で政治経験のないトランプ氏の大統領就任は、膠着(こうちゃく)した基地問題が動く変わり目になり得る。辺野古移設によらずに、米側も納得できる解決方法があるはずだ。

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 翁長雄志知事は、トランプ氏との面会を求め来年2月にも訪米する考えを示した。辺野古の新基地建設に反対する沖縄の民意を伝え、米側に計画断念を要請する意向だ。

 敵意に囲まれた基地は機能しない。日本政府はトランプ氏に対し「辺野古が唯一」との考え方を懸命に吹き込むはずだが、辺野古埋め立て工事を強行すれば激しい反対行動に遭い、沖縄基地全体が不安定化するのは確実である。  県はそのような厳しい現実を、あらゆるチャンネルを使って新政権に伝えるべきだ。