公立保育所全廃を巡り、住民ら2団体が開いた第2回座談会=2016年10月8日、八重瀬町中央公民館

 先日、八重瀬町公立保育園の全廃計画についての座談会に招かれました。母親がかつて認可外保育園を経営していたので、保育園の実情は多少知っているつもりです。でも保育の専門家というわけでもないので、声をかけてくれた八重瀬町法人園長会の川武啓介さんに「僕がどんな話をすればいいのでしょうか?」と尋ねると、「保育分野をあまり知らない一市民として、今回の問題を知名さんのやり方でかみくだいて、町民が分かるようにしてほしいんですよ」ということでした。

 当初は行政からも参加いただける予定でした。行政の言い分もちゃんと発信いただけるよう、冷静に節度をもって接しましょうという話をしていましたが、残念ながら参加はありませんでした。まぁ、こういう雰囲気の中で登壇するのはなかなか厳しかったのだろうと思います。

 保育のことをあまり知らない私は、座談会でいくつか質問をしました。ひとつは「公立保育園職員の待遇って結構いいんじゃないですか?」という質問です。答えは「そりゃ、公務員の給与体系ですから、ある時点で給与が頭打ちになる認可保育園とは比較にならない、うらやましいほどです」というものでした。

 もうひとつの質問は「公立保育園の役割は何なのでしょう」ということです。進行役で沖縄県子ども総合研究所長の堀川愛さんも、園長会の川武さんも、公立保育園に担ってほしいことは山ほどあると言っていました。特に、貧困世帯や虐待など養育問題を抱えた世帯、あるいは困難な障害や行動の問題を抱えた子どもたちの中に、民間保育園では対応困難な場合もあり、これら難しいケースについて公立保育園にも担ってもらいたいことのひとつとして取り上げられました。

 そこで「公立保育園ってそんなに質の高い保育を提供しているんですね」と尋ねると、「んー、いや民間保育園のほうが今は努力してるんじゃないかな」という答えが帰ってきたわけです。それで、私は少し困惑しました。「そんじゃ、公立保育園って何・・・?」って。実際、座談会の休憩時間に参加者から取ったアンケートにも、「公立保育園の役割が分からない」という記述がいくつかありました。

 登壇者の方々とのやりとりで感じたのは、行政と保育現場において公立保育園の役割に食い違いが生じているのではないかということでした。

 かつて保育サービスが地域に十分存在していなかった時代、行政機関が公立保育園を設置し、保育サービスの普及に努めたのだろうと思うのです。一種のモデル事業(モデル保育園)ですね。同時に、法人によって運営されている民間保育園を「認可園」として認め、補助の対象とすることで、民間保育園の経営を安定させ、地域の保育サービスの充足をはかってきたわけです。「認可園」という民間保育園を増やすことによって、地域の保育サービスの拡充を進めてきたわけですね。

 ところが、認可園が増えてくると、状況が少し変わってきたようです。冒頭で紹介したように、公立保育園は「公務員の給与体系」で運営されていて、人件費が低く抑えられている認可保育園と比較すると、運営費が割高になるわけです。行政の視点からすると、公立保育園は「費用対効果の悪い保育園」に見えてきたのではないかと思うのです。座談会のなかでも共有されたのですが、民間保育士(認可・認可外)の給与が低いことは全国的に知られていることです。勤務年数を重ねても給料は頭打ちになるため、他の職種と比べると低い水準のままとなるそうです。

 もしも給与水準の高い公立保育園が、民間保育園と同じような保育しか提供できないのであれば、行政の側から公立保育園不要論が出てしまうわけです。しかし、保育現場の人たちが強く懸念しているのは、そういうことではないようです。

 保育現場の思いは、


▼地域には認可園・民間保育園では担えない難しい保育ニーズがあるということ
 

▼民間園で担うことの難しいような保育ニーズに応えていくためには、保育分野だけでなく他分野との連携にもとづく保育実践が求められているということ
 

▼そしてそういうニーズに応えることのできる公立保育園を確立してほしい


―というものです。