新聞1面のコラムを楽しみにしている読者は多いと思う。私もその1人だ。簡潔な文章中に、時に世間をにぎわす話題を取り込みながら、深い見識による発想で真に重要なことは何かに気づかせてくれる。隠れていた問題点があぶり出され、そのつど、筆者の力量と、その広い視野に感心させられる。

「八重山風土記」(南山舎・1944円)

 本書もそうした魅力にあふれた1冊で、『八重山毎日新聞』に2002年7月から09年10月まで掲載された同一筆者によるコラム集である。平易な言葉で綴(つづ)られた八重山におけるひとつの時代の貴重な記録であり、地域から見た文明批評であり、ひとりの人間が掘り起こす郷土の歴史でもある。

 1969年から始まった同紙のコラム「不連続線」は、同社の礎を築いた村山秀雄氏が最初、独りで書き続け、85年からは複数の執筆陣となり、今日まで連綿として続いている。同一筆者のコラム集としてまとめられたのは、村山秀雄氏、宮里英伸氏に続き、砂川哲雄氏で3冊目になる。

 その内容は、八重山の風物事象すべてにことごとく興味を覚え愛情を注ぐ村山氏、教育と八重山の社会状況に深い関心を寄せた宮里氏、そして文化、芸術に高い見識を示す砂川氏と三者三様だ。だが、各人に共通しているのは、社会の未来に常に希望をつなぐこと。

 砂川氏のコラムに、そのものずばり「〈希望〉を語ること」という一文がある。初孫が家に訪ねてきた師走の感慨をつづったものだ。詩人の三木卓がわが子の誕生に感謝しながら、この世に生まれた新たな命に対する責任の重さに決意を込めた詩「客人来たりぬ」の一節「いまぼくは〈希望〉を語ることが必要な男になったのだ」を引用し、近年の危うい社会状況と自分とを重ね合わせる。そして「私たちは、ささやかな幸せや未来を脅かすような時代を、子どもや孫に決して与えてはならない」と言って結ばれる。重い雲行きの時代や世相のときにこそ、希望と勇気を語りたい。(大森一也・南山舎編集)