沖縄振興の先頭に立つ担当相が沖縄史への理解を欠き、県民感情を逆なでするような発言を繰り返すのは、あまりに異様である。 

 大阪府警の機動隊員が米軍ヘリパッド建設に反対する市民に「土人」と暴言を吐いた問題を巡って、鶴保庸介沖縄担当相は8日の参院内閣委員会で「差別であると断じることは到底できない」との考えを示した。10日の同委員会理事懇談会でも同様の持論を展開した。

 差別用語として問題視してきた政府の立場とは逆に、容認するような発言である。

 内閣委では「言論の自由はどなたにもある」「(県民を傷つけたかは)私が断定するものではない」とも語っている。呆(あき)れてものがいえない。

 警察法は「不偏不党かつ公平中正」に職務を遂行することを義務付け、「憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたるなどその権限を濫用(らんよう)することがあってはならない」とうたっている。その警察官が公務中に一般市民に向かって「どこつかんどんじゃ、ぼけ。土人が」と罵声を浴びせたのである。

 「土人」発言が明らかになった直後、菅義偉官房長官は「許すまじきことだ」と批判した。松本純国家公安委員長は「発言は不適切だ」とし、金田勝年法相は差別用語に当たるとの認識を示した。政府は「極めて遺憾」とする答弁書を閣議決定している。

 担当相の発言とは明らかに食い違っており、閣内不一致と言われても仕方ない。

 安倍晋三首相は任命権者として「土人」発言と鶴保氏発言について、考えを明らかにすべきである。

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 県民との信頼関係を壊す発言はこれだけではない。

 鶴保氏は担当相就任の会見で「消化できないものを無理やりお口を開けて食べてくださいよでは、全国民の血税を無駄遣いしているという批判に耐えられない」と述べた。侮辱的な言い回しで、予算消化できない場合の減額をにおわせたのだ。

 県出身自民党議員のパーティーでは、選挙で勝つことと振興策はリンクするという話を持ち出し、辺野古違法確認訴訟の高裁判決前には、「早く片付けてほしいに尽きる」と県民に不快感を与える言葉を発した。

 振興策の窓口となってリーダーシップを発揮するのが担当相の役割である。そのために重要なのは県民の声を幅広く吸い上げることだ。

 県民と信頼関係が築けない担当相が、沖縄振興にプラスになるはずがない。

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 安倍政権は事あるごとに「沖縄に寄り添う」という言葉を口にする。これが寄り添う姿勢なのか。

 復帰後の山中貞則氏に始まる歴代沖縄開発庁長官、省庁再編後の橋本龍太郎氏に始まる歴代沖縄担当相、合わせて60人近い政治家が沖縄振興に尽力してきたが、こんなにぎくしゃくした関係が続く大臣はいなかった。

 鶴保氏がこれまでの態度を改め、担当相としての職務に専念するか、それができないのであれば、自ら身を引くことが沖縄のためである。