トランプ次期大統領の就任を前にした米国の状況は、「思いやり予算」という形で、日本側の負担を引き出した1970年代後半のカーター政権の頃と似ている。ベトナム戦争後、米国の国防費削減の流れの中で、在沖海兵隊の撤退や縮小の議論があったものの、日本側が引き留めたことで在沖海兵隊は維持され、その後、日本は駐留経費を負担するようになった。(特別報道チーム・福元大輔)

 ジミー・カーター氏は77年1月、第39代大統領に就任。知名度は低かったものの、ウオーターゲート事件で信頼を失っていた政治の立て直しを求める声が当選を後押しした。

 ジョージア州知事を務めるなど地方政治の経験は豊富だったが、「外交の素人」という評価がつきまとった。政治経験がないながら、既成政治刷新の期待を背負うトランプ氏と重なる。

 カーター氏は選挙公約で在韓米軍の撤退を掲げた。また、フィリピンとの間で在比米軍基地の縮小を含む協定改定の交渉を控え、アジアでの米軍プレゼンスを見直す必要性があった。

 そのため米政府の中で、在日米軍の重要性は相対的に高まった。一方、円高ドル安の影響で、日本人従業員の給与が68年の1億4300ドルから75年の4億ドルと増大。在日米軍を安定的に運用するため、日本政府に駐留経費の負担を求めた。

 米国の対日貿易赤字が76年に50億ドルを突破したことで積もりに積もった日本への不満が、「安保ただ乗り」といった批判につながったことが背景にある。

 日米地位協定24条は土地使用料など一部を除き、駐留経費は米国が負担すると定めている。米軍基地で働く従業員の給与を日本側が支払う根拠はなく、外務省は難色を示していた。

 ところが、米軍による基地従業員の大量解雇や、在韓米軍撤退を表明する米国の「アジア離れ」に危機感を抱いた日本政府は、基地従業員の福利厚生費を「24条の枠内」と説明し、78年に62億円を拠出することを決定した。

 国会での追及に当時の金丸信防衛庁長官が「思いやりの立場で対処すべき」と答えた思いやり予算は、施設費、基地従業員の基本給、米軍施設の光熱水費へ拡大し、2千億円近くに膨らんでいる。

 米政府は「米国の負担を減少させた以上に、米国内での安保ただ乗り論批判を緩和させ、在日米軍のプレゼンスに安定性を与えた」と絶賛した。

 日本政府による在日米軍駐留経費の負担によって、在沖海兵隊を含む在日米軍見直しの議論は影を潜め、現在まで固定化されている。

 トランプ氏も「在日米軍の撤退」を示唆し、日本側の不安をあおりながら、在日米軍駐留経費の日本側負担の引き上げを求めている。格差拡大などに不満を持つ国民が「安保ただ乗りは許さない」と支持している点も、カーター大統領の時代と似ている。