■野添文彬氏(沖国大准教授)に聞く

 在日米軍駐留経費の一部を日本が肩代わりする「思いやり予算」が始まった米カーター政権時代を研究する沖縄国際大学の野添文彬准教授に、当時の状況やトランプ次期大統領との向き合い方などを聞いた。(聞き手=特別報道チーム・福元大輔)

沖国大の野添文彬准教授

 -トランプ氏とカーター氏は類似点が多いような気がする。

 「外交、安全保障問題では素人といわれながら、ホワイトハウスに入る点は似ている。今はイラク戦争、アフガニスタン戦争で米国は疲弊している。カーター氏の頃は、ベトナム戦争が終わった後で同様に疲弊していた」

 -カーター氏は在日米軍駐留経費の一部負担を日本に強く求めた。

 「国防総省、国務省、ホワイトハウスの中で、日本から予算を引き出そうとする動きがあった。米国内では日本の安保ただ乗りに批判が高まっていた」

 -日本政府は1978年に「思いやり予算」という形で負担を受け入れた。

 「カーター氏は在韓米軍の撤退を表明していた。同時期に在沖米軍の再編が議論されたことから、沖縄から海兵隊が撤退するのではないか、と日本政府は懸念を強めた。特に防衛庁幹部は『すぐに逃げられない地上兵力を置いておく必要がある』と海兵隊撤退に反対していた。日米地位協定上の根拠はあいまいだったが、日本政府の不安を利用しながら駐留経費を引き出したと言える」

 -弱腰外交に映る。

 「外務省幹部の回想録では在日米軍を維持し、日本の防衛を確かにするための重要な手段として、『日本のイニシアチブ』で米国の負担を軽減したと強調している。しかし、米側の担当者は上司に対し、『日本政府は圧力をかけなくても、してほしいことをしてくれる。ラッキーだ』と報告している。日本がうまく利用されたと思う」

 -トランプ氏は日本にさらなる負担を迫っている。

 「トランプ氏は応じなければ在日米軍を撤退すると、日本の不安をあおっている。軍備拡大を続ける中国の脅威が現実にあり、米政府はその不安をさらに利用しやすい。沖縄の基地負担は減らず、日本側の財政負担だけが増えるというカーター政権時と同じ構図になりかねない」

 -日本政府への期待は。

 「沖縄の過重負担を放置していては、むしろ日米同盟の根幹を揺るがし、日本の安全保障を不安定にすることを認識するべきだ。その上で、米軍基地に依存しない、地域の緊張緩和を目指した外交を打ち出していくことが大切ではないか。トランプ新政権の誕生をこれまでの日米同盟や安全保障の考え方から抜け出す機会にしていかなければならない」