大接戦の末、米大統領選を制したドナルド・トランプ氏は、安全保障に関する発言で物議を醸してきた。就任後の政策には不透明感が漂い、国内では日米同盟の行方に戸惑いと不安が広がる。一方、沖縄では既成政治で膠着(こうちゃく)状態にあった基地問題を前へ進める糸口が見つかるかもしれない、といったほのかな期待も見える。軍事ジャーナリストの田岡俊次さんは冷戦終結後も変化の無かった西側諸国の同盟関係を見直す契機にすべきだと訴える。(特別報道チーム・福元大輔、東京報道部・上地一姫)

トランプ氏の安全保障をめぐる主な発言

■見えない行方 沖縄側にほのかな期待

 トランプ氏は日本、韓国、ドイツ、サウジアラビアなどの同盟国に米軍駐留経費の負担増を要求してきた。日本には在日米軍駐留経費の100%負担を求め、「それが嫌なら米軍は撤退する」と迫った。撤退の道を探るというより、同盟国から金を引き出すための“脅し”と言える。

 日本は米軍基地で働く日本人従業員の給与、軍人・軍属の光熱水費、基地周辺対策費、訓練や施設の移転に伴う経費、国有地の無償提供などで年間7千億円以上を支出している。日米地位協定上の根拠が乏しい、いわゆる「思いやり予算」も含まれている。各国と比較すると、2位ドイツの倍以上と突出する。米国との負担の割合では日本の75%が、韓国の40%、ドイツの33%を大きく上回る。

 トランプ氏は財政難の米国には「日本を守る余裕がない」と言うが、在日米軍は日本防衛のためだけにあるわけではない。米側の公文書でも「在日米軍は日本本土を防衛するために駐留しているわけではない」という米政府や軍部の考えが明記されている。

 ベトナム、湾岸、イラク、アフガニスタンの戦争で出撃、補給の拠点となった事実は、在日米軍が米国の世界戦略の中に位置付けられていることを裏付けている。

 日本政府はこの機会に、どの部隊、施設が日米安保条約6条に定める日本防衛と極東アジアの平和と安定の維持に必要か、その役割を果たしているか、を検証しなければならない。その中で在沖海兵隊を中心に、沖縄の基地、施設の整理、縮小が加速する可能性はある。財政面ばかりではなく、国内での基地負担の在り方も議論するきっかけにすべきだ。

■地上兵力の大規模派遣の可能性も

 一方で、トランプ氏は軍拡についても積極的に語っている。陸軍兵士を49万人から54万人、空軍戦闘機を1113機から少なくとも1200機、海兵隊大隊を23部隊から36部隊に増やすと主張。中東の過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討に向け、空爆中心では効果が限定的と見て、地上兵力の大規模派遣に乗り出す可能性がある。

 「イスラム教徒をテロ問題が解決するまで入国させない」「違法移民を送り返す」という発言も、テロの脅威に対する国民の共感を得たと言える。

 海兵隊が増強されれば、米本国以外で唯一前方展開している在沖海兵隊への影響は避けられない。航空部隊の拠点となる名護市辺野古の新基地建設の必要性が、トランプ氏のもとで高まるとの見方もある。

 世界秩序にどのような変化をもたらすか、予測できず、「期待しつつ、注視したい」(翁長雄志知事)という沖縄の状況はしばらく続きそうだ。