■田岡俊次氏(軍事ジャーナリスト)に聞く

 選挙中の発言は、国際問題に無知・無関心な人たちが言うことを断片的に羅列したにすぎない。切れ端を集めたフルーツポンチみたいなものだ。だが「世界の警察は続けられない」や「同盟関係を根本的に見直す」との論は一貫している。冷戦が終了し東側陣営はいなくなったのに、西側同盟は変わらない形で残っている方が歴史的に見れば異様。いずれどこかで見直さなくてはいけないことだった。

軍事ジャーナリストの田岡俊次氏

 日本は本年度、在日米軍に5566億円を支出し、無償提供する国有地の推定地代は1658億円あり、昨年度は基地交付金など388億円も負担している。米国が負担する在日米軍駐留経費の大部分は軍人の給与なので、これ以上出すなら米軍人を日本の傭兵(ようへい)にして自衛隊の指揮下に入れるかという話になる。

 「米軍が日本を守っている」と言われるが間違いだ。直接、日本の防衛任務を負っている在日米軍の部隊はいない。たとえば、第7艦隊は西太平洋、インド洋での制海権を確保するために佐世保や横須賀を拠点としている。海兵隊はその陸戦隊なので、揚陸艦に乗って巡航する。沖縄を守っているわけではない。嘉手納や三沢などの戦闘機も中東に派遣され、日本の防空は全面的に航空自衛隊が担っている。嘉手納弾薬庫やホワイトビーチの補給機能も日本防衛に無関係。米軍部隊が、米本国に戻れば基地の維持費は自前で出さなくてはいけない。米議会では「日本にいた方が安い」という答弁が何度もあった。

 日米防衛協力のための指針に、日本は「国民と領域を守るために一義的責任を有する」、米軍は「支援補完をする」と書いてある。米軍が出て行っても日本の防衛に穴は空かない。もし負担をこれ以上求めるなら昨年末に決めた駐留経費の特別協定(思いやり予算)にも反する。その有効期間は5年だから、日本は話にならないと蹴っていい。

 撤退により(1)沖縄の基地問題は解決。(2)年間6千億円近い負担を免れる。(3)北朝鮮のミサイルはもっぱら韓国軍基地、在韓米軍基地、在日米軍基地を狙う。米軍が去れば北朝鮮が日本を狙う意味はなく、核の脅威は大いに削減される-などのメリットがある。

 現実的には、将来も米国が世界第一の海軍国であることに変わりない。西太平洋やインド洋の制海権を保つには、船の修理能力のある横須賀・佐世保は手放せない。空母艦載機用飛行場となる岩国、揚陸艦に乗り組む海兵隊員の待機所として沖縄を使っているが、沖縄でなくてもいい。陸自の相浦駐屯地に海兵隊を置けば、佐世保の隣なので米軍も都合がいい。

 結局は日本が「出て行きたければどうぞ」と言えば、米国は「なんとか置いてほしい」となり、力関係は逆転する。まさにトランプ氏は日本にとって「切り札」になる。日本が守ってもらっているとの誤解があるからおかしな議論になっているが、ほこりを払って実態を明らかにするチャンスだ。外務省や政権に根性があれば、むしろトランプ大統領は日本にとって有利なカードとして利用できる。(聞き手=東京報道部・上地一姫)