■キャサリン・ラッツ氏(米ブラウン大教授)に聞く

 次期大統領に選ばれたドナルド・トランプ氏が選挙期間中に米軍駐留費を見直さなければ在日米軍撤退もあり得るとの発言の背景は何か。沖縄の軍事植民地化に言及した著書「基地の帝国」など、米国の基地政策に詳しい人類学者で米ブラウン大学教授のキャサリン・ラッツ氏に聞いた。 (聞き手=平安名純代・米国特約記者)

キャサリン・ラッツ氏(米ブラウン大教授)

 -トランプ氏は米国の同盟国は米軍駐留費の負担を拡大すべきだと主張した。発言の真意は何か。在日米軍撤退の可能性は実際にあるか。

 「ドナルド・トランプ氏が選挙期間中に示した外交政策を巡る方針は、情報不足で漠然としたものだった。そのため、彼のアジアに関する政策を予想するのは困難だ。国家主義者や異文化に嫌悪感を持つ一部の米国民の心理にアピールしようとの試みがトランプ氏を米国が同盟国の防衛費を負担する必要はないとの主張に導いた。トランプ氏には、米国が国益とみなしている地域での米軍の活動を巡り、日韓両国が(基地などの)資産や土地使用の権利などすでに数十億ドルを寄与しているとの認識がない。選挙期間中、トランプ氏は自分が(他の候補者たちよりも)強く、米国人を守る指導者なのだと暗示するために、米国内外を問わず、人々の恐怖心をたきつけた。トランプ氏は、米国人を守るために、国内におけるより積極的な警察の活動、より積極的な軍事行動、軍事支出の増大を実行すると言った。しかし、アジア太平洋から米軍を撤退させるという試みに米軍の上層部はそう簡単に譲歩しないだろう」

 -「沖縄は日米両政府による軍事植民地だ」と言った。日米両政府は新基地建設計画を強行しようとしている。トランプ氏の当選により、“軍事植民地”的状況に変化は生じるか。

 「これもまた予測が難しい問いだ。なぜならドナルド・トランプ氏は、世界における紛争への米軍の関与を減らすと主張する一方で、ISと『イスラムのテロリズム』に対する積極的な行動も主張しているからだ。米議会には、海外の米軍基地の削減を支持する自由論者の勢力がある。トランプ氏は、実際に幾つかの基地を閉鎖したり、または日本のような同盟国からさらなる資源を引き出すために、そうした層に協力するかもしれない。しかしながら、最も恐ろしくて危険なのは、今後はドナルド・トランプ氏が米国の核兵器を支配し、米国のヒロシマ後の歴史において、どの大統領よりも核を使う可能性が高いということだ」