■高橋並子さん(37)=那覇市出身

 創業100年を誇る老舗船宿「あみ達」(東京・江戸川区)の若おかみとして、経理事務やPR、乗船客への応対と、忙しい船宿を切り盛りしている。「沖縄出身と言うと、たいてい驚かれます」。江戸時代の河川文化として花開いた屋形船は、沖縄にはない風物。「最初は誰かが手こぎでこいでいるのかと思っていた」と明るく笑う。

「沖縄や海外の人達に屋形船の魅力を味わってもらいたい」と語る、高橋並子さん。東京・江戸川区、自社保有の屋形船で。

 きっかけは上京後、大学生時代にしていた配膳のアルバイト。ちょうど、桜が満開の時期に「あみ達」に派遣された。花見客で満員の船内で息つく余裕もなかったが、川面に映る美しい桜に心を奪われた。何度か派遣されるようになったある日、帰宅時に船長を務める若旦那に呼び止められた。「良かったら連絡をください」。電話番号が書かれたメモを渡された。

 「突然でびっくりしたけど、荒々しい船乗りのイメージとは違い、穏やかで感じが良い人」。数回の食事を経て、結婚を前提とした交際に発展。卒業後は商社で営業事務として働いていたが、妊娠を機に船宿の若おかみとなった。

 男性従業員が多く、安全航行が第一の職場では、時に厳しい言葉が飛び交う。「キビキビしたおかみのイメージに合わせなければ」と当初は無理もしていた。家族経営の小さな職場。「お客さんに一番に接する従業員が、気持ち良く働いてもらわないと」。スタッフとの対話を重視し、相手の気持ちを考えた助言を心掛けた。「沖縄のゆったり感が、うまく作用しているのかな」とほほ笑む。

 4代目となる「あみ達」は8隻の船を保有する業界大手。質、量ともに自慢の料理や、掘りごたつ席が好評だ。英語力やSNSでの情報発信を生かし、海外からのリピーターも多い。「伝統を守りつつも、時代のニーズを取り入れて新しい風を吹かせたい」と語った。(小笠原大介東京通信員)=連載・アクロス沖縄<27>

 たかはし・なみこ 1979年那覇市生まれ 興南高校、桜美林大学を卒業。老舗船宿「あみ達」でのアルバイトを機に現在の夫と出会い23歳で結婚。若おかみとなる。お台場や東京ディズニーランドを回るクルーズに、ベジタリアンメニューなど豊富なプランは国内外に人気。旧姓は金城。