米軍北部訓練場の過半(約4千ヘクタール)の返還で、沖縄防衛局が跡地利用特措法に基づき、地権者に土地を引き渡す前に実施する汚染除去が限定的な範囲にとどまることが分かった。調査団体「インフォームド・パブリック・プロジェクト」(河村雅美代表)が防衛局の説明資料を入手して明らかになった。

 沖縄防衛局は汚染除去の範囲を(1)米軍車両の通行があった道路(2)既存のヘリパッド(着陸帯)とその周辺(3)ヘリが墜落し土壌汚染などの蓋然(がいぜん)性が高いと考えられる場所-としている。なぜ3点に絞るのか、納得がいかない。

 同訓練場の使用は1957年10月にさかのぼる。米国外で唯一のジャングル戦闘訓練施設と位置付けられ、対ゲリラ訓練などが行われてきた。6件のヘリ墜落事故が起き、県民の水がめの福地ダムなどで米軍のペイント弾が大量に見つかったこともある。

 看過できないのは、ベトナム戦争で米軍が使用した猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤の散布を北部訓練場で行ったとの証言である。

 60年から約2年間、同訓練場とその周辺で散布したと作戦の立案に関わった米陸軍の元高官が本紙の取材に答えている。複数の元米兵らの証言もある。ほぼ同じ時期に枯れ葉剤を散布した元米兵の健康被害を米退役軍人省が認定している。環境汚染の懸念が拭えないのである。

 だが米軍は公式記録がないことを理由に否定している。米軍は北部訓練場の使用履歴を開示する必要がある。防衛局も強く働き掛けるべきだ。

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 返還される北部訓練場の約8割は国有地である。国から国への返還となり、汚染除去がなれ合いになることを危惧する。汚染の除去期間は米本国では10年以上かけるといわれるが、1~1年半に短縮していることも気掛かりだ。

 沖縄防衛局は返還予定の米軍基地の使用履歴を事前に問い合わせるが、米軍はおざなりの回答に終始する。

 例えば2015年に返還された西普天間住宅地区。米軍は「毒性廃棄物の一時保管や廃棄があったことを示す記録は見つからなかった」「埋められた廃棄物の記録は見つからなかった」などと、木で鼻をくくったような回答のオンパレードである。防衛局もこれ以上の要求はしない。

 記録が見つからないとは、保管や廃棄がないことを意味しない。18本のドラム缶が見つかり、法定基準の26倍の鉛、同じく5倍のヒ素が次々検出されたことからも分かる。

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 政府が北部訓練場の年内返還を急ぐのは政治日程に合わせた要素が大きい。大規模返還をアピールし、沖縄が占める米軍専用施設の割合を下げることに狙いがある。といっても74・4%から70・6%に低下するにすぎない。

 返還跡地から有害物質が検出され、跡地利用に支障を来す元凶は日米地位協定にある。米軍は原状回復義務を免除されているからである。

 環境省は返還地を「やんばる国立公園」へ組み込む方向といわれる。ならば、なおさら枯れ葉剤を対象にした汚染調査が必要だ。