安倍晋三首相とドナルド・トランプ米次期大統領の会談が米ニューヨーク市内のトランプタワーで行われた。日本の首相が就任前の大統領と会談するのは異例である。

 首相は「信頼関係を築く確信を持てる会談だった」と自画自賛するが、大統領就任前の非公式な会談であることを理由に具体的な内容は明らかにしなかった。

 首相が記者団に「私の基本的な考え方については話をさせていただいた」と語っていることから、アジア太平洋地域における日米同盟の重要性や環太平洋連携協定(TPP)を含めた自由貿易推進の意義を強調したとみられる。

 これに対し、トランプ氏がどう応じたかは定かではない。トランプ氏は大統領選挙期間中に、日米同盟の在り方に疑問を呈し、在日米軍駐留経費の負担増を求める発言をした。応じなければ米軍を撤退させることにも言及した。

 安倍政権が前のめりになって衆院を通過させた環太平洋連携協定(TPP)からの脱退も表明している。

 首相は「都合のいいときに再び会い、より広い範囲についてより深く話し合うことで一致した」と述べた。

 初会談でトランプ氏の選挙中の考えを修正できたとみるのは難しく、先送りになった可能性が高い。

 トランプ政権が正式発足してからの交渉によっては日本の軍事的役割の増加を求めてくる懸念も消えない。そうなれば、沖縄は負担軽減どころか、さらなる負担を押しつけられることになりかねない。

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 米軍普天間飛行場の辺野古移設問題が議題に上ったのかどうかも分からない。

 トランプ氏は政権移行チームを発足させたばかりだ。

 これまでトランプ氏からは普天間移設問題についての発言は出ておらず、担当の国務、国防長官人事もこれからである。トランプ政権が普天間移設問題にどう向き合うか、はっきりしていないというのが現状だろう。

 翁長雄志知事は大統領就任後の来年2月に訪米を計画しているが、むしろ政権移行期の今こそ県ワシントン事務所などあらゆるチャンネルを活用して辺野古新基地建設に反対する沖縄の民意と、仮に強行することがあれば日米安保全体がリスクにさらされることをトランプ氏側に正確に伝える必要がある。

 というのは、「最低でも県外」を公約に掲げた鳩山由紀夫民主党政権の失敗は、外務、防衛官僚が沖縄の民意に真(しん)摯(し)に向き合わず、首相の足を引っ張っていたことが明らかになっているからだ。

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 沖縄の海兵隊は1年の半分以上をアジア太平洋地域を巡回し、活動の軸足を人道支援や災害救助に移している。沖縄を拠点にしなければならない理由はないのである。

 その代わり在日米軍の駐留経費を海兵隊を運ぶ高速輸送船に回すことを提案する軍事専門家がいる。沖縄を拠点とせずにアジア太平洋地域を回るのである。辺野古新基地をはじめ県内の米軍基地の約7割を占める海兵隊基地がいらなくなる。日本政府も「思考停止」から脱する時だ。