逮捕から半年。元米兵暴行殺人事件で、被害者の父親が手記を寄せた。被告への強い怒り、癒えぬ悲しみ、「大事な一人娘」への深い愛情を振り絞るようにつづっている

▼「なぜ娘が」。突然、娘が殺されたことを受け止められず、気持ちの整理がつかないことに胸が痛む。「私達遺族にはいかなる言い訳も通用しません、被告人は人ではありません」と極刑を望んでいる

▼金武町の吉田勝廣さん(71)は、被害者の遺体が発見された恩納村の現場へ6日に1度行く。花をたむけ、手を合わせ、献花台の周りを掃除する。事件を忘れないため、だ

▼「米兵がらみの事件や事故が起こるたびに二度と繰り返さないと誓うが、いまだに政治は問題を解決できていない」。町長や県議など23年間、政治に関わってきた吉田さんは、自分自身にも問い掛けている

▼父親の手記は最後に「沖縄に米軍基地があるゆえに起こる。一日でも早い基地の撤去を県民として願う」と訴える。吉田さんは「根本的な解決にはそれしかない。政府はごまかしている」

▼1995年の米兵暴行事件後、日米両政府は普天間飛行場の返還に合意したが、何も変わっていない。今回の殺人事件でも、政府はパトロール強化に向け、県警の定員100人増とパトカー20台増を決めただけだ。遺族の願いとは、ほど遠い現実がある。(玉寄興也)