衆参両院の憲法審査会が相次いで実質審議を再開した。

 憲法審査会は憲法改正原案が提出された場合、これを審査し、採決する場となる。過半数が原案に賛成すれば可決され、本会議に提出される。

 現在、衆参両院ともいわゆる「改憲勢力」が改正発議に必要な3分の2を超えており、憲法改正が現実味を帯びてきたのは確かだ。

 約1年5カ月ぶりに再開された衆院憲法審査会で明らかになったのは、「改憲勢力」の中でも憲法観や改憲項目などについて相当の温度差があることだ。

 公明党は、憲法の理念を維持しつつ、必要があれば新たな条項を付け加えるという「加憲」の立場に立つ。同党の北側一雄氏は、現行憲法を連合国軍総司令部(GHQ)による「押しつけ」だとみる考え方に対し、「賛同できない。主張自体がもはや意味がない」と言い切った。

 改憲を党是とする自民党の中には今も「押しつけ論」が根強く残っている。そのような考えと明確に一線を画したわけだ。野党を含めると隔たりはもっと大きくなる。

 なぜ、各党の考えがこれほどバラバラなのか。それは、早急に改正しなければならないと各党が共通に感じる理由がないからである。

 戦後憲法の平和主義によって敗戦国日本は国際社会から受け入れられ、国内的には「個」を大事にする社会を曲がりなりにも実現した。現行憲法が国民の間に定着していることは、改憲に熱心な自民党も認めている。改憲を急ぐ理由が見当たらない。

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 安倍晋三首相は、歴代の総理の中でもとりわけ改憲に熱心で、「任期中に実現したい」という意向を明らかにしてきた。だが、その進め方は策略的な印象が強い。

 当初は、改正手続きを定めた96条の改正を主張した。裏口入学だと各方面から批判を浴びるとこれを引っ込め、緊急事態条項を前面に掲げるようになった。

 さらに最近では、参院選の「合区」を憲法改正によって解消するという考えが急浮上している。

 ほんとうは何を変えたいのか。本音を隠しているのか、とにかく変えたいのか。

 民進党は「安保法を放置しての改憲論議は絶対許されない」(白真勲氏)と述べ、安保法制の議論を優先すべきだと主張する。

 「合区」についても「選挙制度はあくまで法律事項」と主張する公明党との隔たりは大きい。

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 本土と沖縄では、憲法を語る前提が決定的に異なる。憲法制定時、米軍政下にあった沖縄は、選挙権が停止され、現行憲法を制定する議会に住民代表を送ることができなかった。沖縄代表不在の国会で成立した憲法は、1972年の復帰まで沖縄には適用されなかった。

 復帰によって沖縄にも憲法が適用されたが、憲法や地方自治法は安保・地位協定・日米合同委員会合意によってがんじがらめにされている。本土と沖縄では憲法状況に大きな違いがある。差別的状況を解消することが先決だ。