【郷田まみ通信員】「和食と言えばすし」というのがブエノスアイレス市民の常識となっている。市内にはすしのデリバリーや「すし・天ぷら・すきやき」などの定番料理を提供する店も多く、和食へのアクセスはとても簡単だ。だが日本ではすしはすし屋、焼き肉は焼き肉屋と専門店が多い。ブエノスアイレスに住む県系の東吉濱セルヒオさん(42)、直美さん(39)夫妻が今年6月にオープンした「TORi TORi」はその名の通り、焼き鳥専門店だ。

日本で食べるような、さまざまな種類の焼き物が並ぶ

アルゼンチンでは珍しい、焼き鳥専門店「TORi TORi」をオープンしたセルヒオさん、直美さん夫妻

日本で食べるような、さまざまな種類の焼き物が並ぶ アルゼンチンでは珍しい、焼き鳥専門店「TORi TORi」をオープンしたセルヒオさん、直美さん夫妻

 レコレタ地区エクアドル街にたなびく、赤いのれんが目を引く。16席と小さな店だが木製のテーブルとイス、ちょうちんと和風のイメージで店内をまとめ、アットホームな店内だ。

 セルヒオさんは父親が県系1世、母親が2世。直美さんはテキサス生まれ、東京育ちのタンゴダンサーだ。2013年に全米大会で優勝、14年にアルゼンチンで長期滞在をはじめ、指圧師だったセルヒオさんと出会い去年結婚した。 

 日本で挙式するために日本を訪れ、焼き鳥屋を開くことを決めた2人。「鶏肉とピーマンと玉ねぎだけが焼き鳥じゃない。日本で食べる焼き鳥屋を開きたい」と約5カ月、具材や味、たれの試行錯誤を重ねた。準備期間中、周囲の人から「え? 焼き鳥だけ? すしは?」と聞かれることもあるなど、当初は客の期待度も低かったとか。だがオープンした6月から多くのメディアに取り上げられ、いまや人気の話題の店となっている。

 日本同様、もも肉やレバー、皮、手羽、つくねと鶏だけでも複数の部位を使用。たれ味、カレー味、キムチ風味などの味のアレンジもあるほか、うずらの卵やシイタケ、ズッキーニなどの串も人気だ。アルゼンチンの人々の口に合うアレンジを加えつつ、日本の本来の焼き鳥の味を広めている。

 テークアウトもできるので、近所にも常連が増えてきた。現在スタッフは5人。2人は「常に模索し、革新を目指し続けたい」と意気込んでいる。