「ひえものご免」。江戸時代からの言い回しという。辞書によると、江戸の銭湯で、湯船に入るときのあいさつだった。冷えた体で、湯がぬるくなったらごめんよ。まわりへの気遣いの言葉だったらしい

▼昨日は、「ひえものでござい」とでも言って、お風呂で温まりたくなる日だった。真冬並の寒気が上空に入った影響で、関東を中心に雪が降った。東京都心で11月に雪が降るのは54年ぶりで、観測史上初めて積雪も確認された

▼天候が荒れると交通機関が乱れ、仕事や生活への影響が増大するのが、大都会の弱点でもある。電車の遅れ、運転見合わせで、立ち往生した

▼この寒さ、数日は続くらしい。秋があっという間に去り、冬が一気に来るようで、寂しさを感じなくもない。折しも、東京は紅葉が見ごろの時期でもある

▼木々が美しく色づくためには、冷気に適度な水分、日中の日差しと、3要素がそろうことが大事だという。昨日の雪は果たしてどう作用するだろうか。冷気や水分の条件には合っているだろうが、葉を散らすことにならないか…

▼もう年末になる。震災をはじめ、今年も心に「ひえもの(冷気)」を抱え、苦しく悲しい涙(水分)を流した人も多かっただろう。心が少しでも色づくよう、日差しのような温かみを互いに持ち合わせていたくなる寒い晩秋である。(宮城栄作)