作曲家の渡久地政信さんは売れない歌手時代、間奏でカチャーシーを踊り、喝采を浴びた。「歌は受けずに、踊りで喜ばれた」ことで歌手を断念し、作曲家に専念。「上海帰りのリル」などのヒット曲を世に出した

▼劇団与座の座長、与座朝惟さんが沖縄芝居の世界に飛び込んだきっかけは父・朝明さんの男泣き。花形役者の代役を務めた一座の座長、朝明さんは芝居が納得できず、「あと10年若ければ」と悔しがった。翌朝、18歳の朝惟さんは弟、ともつねさんと一座に入団した

▼戦前から活躍していた大宜見小太郎さんや真喜志康忠さんらに対し、1950年代から舞台に立った朝惟さんは戦後派のスターの一人

▼史劇を得意とするともつねさんに対し、朝惟さんは歌劇や現代劇の二枚目から三枚目までこなした。ともつねさんの剛の技と朝惟さんの柔の間合いの絶妙なコンビネーションで与座兄弟の看板を築いた

▼当たり役の一つが現代劇「次男坊」の次郎役。障がいがありながらも情愛が深い次郎が巻き起こす泣き笑いの家族劇だ。とぼけた演技が人気だった

▼様式がある史劇や歌劇に比べ、三枚目の味わいを継承するのは難しい。朝惟さんは22日、81歳で亡くなった。劇団を守るためさまざまな役に挑戦したと話していた。幅広い芸域でファンをつかんだ役者をまた一人失った。(与那原良彦)