沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡る作業部会で、県と政府は、互いに求めた臨時制限区域内の船舶の通航と、キャンプ・シュワブ内の隊舎の建設を事実上の「バーター」で決着させた。県は、隊舎以外の工事は認めないとの姿勢を明確にしているが、市民や県政与党からは事実上の辺野古工事再開では、との懸念が上がる。新基地に関連がないとはいえ、今年3月の和解以来止まっていた工事が年内にも動きだす可能性が高まっている。(政経部・大野亨恭、銘苅一哲、東京報道部・上地一姫)

新基地建設が予定されているキャンプ・シュワブ=7月22日、名護市辺野古(本社チャーターヘリから)

 「業者と調整がつけば急いで工事を始めたい」

 政府関係者は、県が隊舎工事を認めたことに胸をなで下ろし、年内にも着手する考えを強調した。

 政府側が安堵(あんど)するのは、県が工事容認後、約2カ月間も膠着(こうちゃく)していたからだ。

 防衛省関係者は作業員などの確保に時間がかかるとする一方、「ようやくシュワブ内で工事ができる」と語り、その先に辺野古の埋め立て工事を見る。

 一方、県は「認めたのは隊舎だけ。ほかは指一本触らせない」(県幹部)と防衛の姿勢を打ち消す。

 県幹部によると、隊舎は1950年に建てられたもので老朽化が進んでおり、今の場所から数百メートル離れた場所に4階建ての隊舎を二つ建設し、兵士を移り住まわせる計画だという。

 隊舎の場所は埋め立て工事には関係がない場所で、今年9月には県職員が現場を視察し、新基地建設工事とは関係がないことを確認したという。

 国側は作業部会で和解条項の下ではコンクリートプラントは建設しないことを明言し、制限区域内の船舶の通航も一部認める考えを示した。県幹部は「今回の協議は7割方、県の狙い通りだ」と語る。

 だが、今年3月以来止まっていた工事が動きだすことに、反発の声が上がる可能性もある。

 実際、県議会の与党幹部は、「陸上部の兵舎であっても新基地建設と関連する工事ではないのか。新基地は造らせないという県政が(臨時制限区域内の航行との)交換条件に応じ、妥協したと県民から疑問視されかねない」と指摘する。

 一方、制限区域の航行に関しても、事実上の許可制を検討していることが分かった。日米両政府は当初から、制限区域の通行は容認する考えだった。ただ、漁船は港まで氷を取りに行くという理由がある一方、抗議する市民が乗っている可能性があるプレジャーボートには難色を示していた。

 そこで政府は航行船舶に事前申告を求める方針を決めた。目的や所属などを照会し審査することで、抗議者の排除が狙いだ。横断幕を持った船や不要に停泊する船は排除する可能性があるという。さらに、プレジャーボートに関しては、米側は隊舎の工事開始を確認次第、航行を認めるとの条件も示してきた。

 だが、いずれの「合意」も、違法確認訴訟の最高裁判決次第で事実上の白紙になる。県が勝てば政府は辺野古計画の大幅な見直しを余儀なくされ、逆に国が勝てば、海上の埋め立て工事を強行するとみられる。

 県幹部は、「和解条項に基づき協議は丁寧に進める。一方、県の最大の目的は辺野古新基地阻止だということは、少しもぶれていない」と強調した。