著者、比嘉佑典氏は遊び心に溢(あふ)れた人である。著者とお会いすると次から次に出てくるアイデアに時間が経(た)つのを忘れるほどである。

ゆい出版・1620円

 専門は教育学であるが、創造学会の創設から関わり、学会のリーダーとして牽引(けんいん)役を果たしてきた。「創造」あるいは「創造性」とは何か。本書では著者はなかでも子どもの創造性について言及している。本書は、著者が紀要や学会、雑誌で発表した論文を整理して1冊にまとめたものである。

 21世紀に入って創造性の重要さはより増したと思われるが、次代を担うはずの子どもたちの創造性に著者は警鐘を鳴らす。

 人は、生まれると間もなく遊び始める。遊びは子どもの生活のほとんどである。遊びの世界を通らずして、大人になった人は誰一人としていない。みんな遊んで大きくなった。著者は、そう断言する。

 遊びは奥深いものである。遊びの豊かさは文化の豊かさに通じるともいう。著者が子どもの遊びに危機感を募らせたのは1970年代のことである。

 伝統的な遊びが廃れ、箸が使えない、ひもが結べない、鉛筆が削れない、ナイフが使えないといった手を使う遊びの衰退が問題となった。

 さらに電子玩具の登場は、伝統的玩具を消滅させ、自ら玩具を作り出すことはなくなった。与えられたマニュアルに基づく遊びが主流になってきた。

 著者が危惧するのは、手が自ら創り出すことをやめたことである。

 伝統的な遊びや手仕事が子どもの発達にいかに重要であるかを一貫して力説しているのが本書である。

 今こそ、「遊び」の重要性を見直し、創造的に「遊ぶ」ことを大人が支えていく必要があるだろう。「遊び心に溢れた遊び人」比嘉佑典氏からは、今でも創造性溢れるアイデアが発信され、その幾つかは、すでに実現しているものもある。(松田米雄・ゆい出版編集発行人)※ゆい出版・1620円