沖縄の声を本土や海外に届ける戦略を探るシンポジウム「沖縄から問う報道と表現の自由」(共催・沖縄タイムス社、沖縄国際人権法研究会、特別協力・連合沖縄、後援・沖縄弁護士会)が21日、那覇市久茂地のタイムスホールで開かれた。基調講演とパネル討論があり、政権による報道規制が強まる中、メディアが権力監視を継続する必要性を確認した。北部訓練場のヘリパッド建設で県外の機動隊員による差別的な「土人」発言では、差別の構図を「立場の弱い側の言葉を奪い、権利の獲得を阻害し、社会を分断させる」と分析。本紙の石川達也編集局長は「圧倒的な権力の前で、抵抗する市民の側に立ち報道を続ける」と決意表明した。シンポジウムの模様を詳報する。

「報道と表現の自由」について議論を交わすパネリストら=21日午後、那覇市久茂地・タイムスホー-ル

講演に熱心に耳を傾ける参加者。満席の約360人が来場した=21日午後、那覇市久茂地・タイムスホール

アンナ・ファイフィールド氏(ワシントンポスト東京支局長)

安田浩一氏(ジャーナリスト)

「本土から見る 沖縄の報道と自由」と題し、基調講演する岸井成格氏(毎日新聞社特別編集委員)=21日午後、那覇市久茂地・タイムスホール

石川達也氏(沖縄タイムス編集局長)

司会の加藤裕弁護士

「報道と表現の自由」について議論を交わすパネリストら=21日午後、那覇市久茂地・タイムスホー-ル 講演に熱心に耳を傾ける参加者。満席の約360人が来場した=21日午後、那覇市久茂地・タイムスホール アンナ・ファイフィールド氏(ワシントンポスト東京支局長) 安田浩一氏(ジャーナリスト) 「本土から見る 沖縄の報道と自由」と題し、基調講演する岸井成格氏(毎日新聞社特別編集委員)=21日午後、那覇市久茂地・タイムスホール 石川達也氏(沖縄タイムス編集局長) 司会の加藤裕弁護士

■登壇者

 岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員)

 アンナ・ファイフィールド氏(ワシントンポスト東京支局長)

 安田浩一氏(ジャーナリスト)

 石川達也(沖縄タイムス編集局長)

 司会 加藤裕氏(弁護士)

基調講演:岸井成格氏「安保と原発批判、許さぬ政権」

 政治記者になり復帰前に沖縄へ来たとき、パスポートが必要だった。当時の仕事は、首相の動向を密着取材する総理番。総理府総務長官は山中貞則さんだった。山中さんは台北第2師範学校で、(元県知事の)屋良朝苗さんの教え子だったこともあり、われわれにも沖縄の歴史、沖縄の心を懇々と説いてくれた。

 そして現在の安倍内閣だ。特に集団的自衛権の行使は歴代の首相、内閣法制局長官が「憲法違反であり、憲法改正をしてからでないとできない」と言ってきたものを、一内閣の閣議決定で容認した。

 昨年、TBSニュース23で「変わりゆく国 安保法制」という特集を始め、40回続けた。その中でアーミテージ元米国務副長官にインタビューすると、こう語った。

 「今まで米軍が自衛隊に『協力してくれ』と言っても『憲法9条があるからできません』が、バリケードのように立ちはだかってきた。しかし安保法制で時間的・地理的な制約がなくなった。戦後初めて、自衛隊が米軍のために『命を懸ける』と約束した法律だ」

 これが米側の本音だ。しかし、国会では本当のことが説明されていない。成立の3日前に私は「強行採決は認められない。メディアとして廃案に向け声を上げ続けるべきだ」と言った。すると、全国紙に1面を使った意見広告が出て「偏向報道」「放送法4条違反」だと批判された。

 私の発言の前提には、戦前にメディアが軍部や政治の暴走を止められず、逆に戦意をあおって戦争に突き進んだことがある。日本のメディアは戦後「権力は必ず腐敗し暴走する。これを監視しブレーキをかけることが最も大事な使命だ」という決意で再出発した。

 いま、政権報道にはタブーがある。その一つが安保と原発だ。東日本大震災後、いまだに10万人以上が避難生活を送っている。それでも原発を再稼働する。本当に大丈夫か。

 安保では、辺野古や高江に造ろうとしている基地が何のため、どういう時にどれだけ役立つか。徹底した議論はしていない。そして沖縄の報道に、平気で「売国奴」という言葉が飛び交う。一方で、過激なことを言えば言うほど愛国者とされる。

 自民党の勉強会で「沖縄の二つの新聞は国益に反している。つぶすべきだ」という発言が平気で出る。何が良いか悪いかの価値判断を含め、文明の岐路とも言うべき転換点にきているのではないかと感じる。