世紀の変わり目にキューバを訪ねた。米国の目と鼻の先にある社会主義国を見てみたかった

▼若い兵士たちと友だちになった。連れて行ってもらった粗末な屋外ディスコは最新の米ヒット曲を大音量で流していた。米国に絶交され、仕方なく社会主義陣営についただけ。本当は米国文化が大好き、という説が体で理解できた

▼言葉は通じなかったが、ディスコを出てからもみんなでボブ・マーリーを歌った。酔いつぶれた私を、兵士たちはホテルまで送り届けてくれた。財布もパスポートも無事。私が知るキューバはそんな国だ

▼フィデル・カストロ氏が死去した。米国と癒着した独裁政権を倒し、公正な社会を目指した。福祉や教育では成果があり、治安も確かに良かった。ソ連崩壊で社会主義経済は破綻したが、市場原理を取り入れつつ模索は続く

▼革命前の蜂起失敗で罪に問われたカストロ氏は法廷で演説した。「大統領自身が犯罪者であり泥棒である国では、正直者は死んだか投獄されているのも当然だ」「私を断罪せよ。構うことはない。歴史は私に無罪を宣告するだろう」

▼現地で買ったこの演説の小冊子を見返していて、裏表紙に兵士たちの寄せ書きを見つけた。元気でやっていますか。沖縄も歴史の審判を信頼して、米国や属国のような自国政府と向き合い続けています。(阿部岳)