日本を代表するデザイナー、山本寛斎さん(72)に娘の命名をめぐる逸話がある。初めて挑戦したパリコレが「失敗」に終わり、「人生で一番辛(つら)かった」という30歳の時のことだ

▼寛斎さんは手を合わせて祈った。「神様、もう一回まじめにやりますから、私自身の人生に未来を下さい」。再起を誓った後に誕生した次女に「未来(みらい)」と名付けた

▼それぞれの一家にも命名をめぐる物語があるはずである。明治安田生命保険が28日発表した、ことし生まれた赤ちゃんの名前のランキング表を見ながら思う

▼男の子は「大翔」(ひろと=主な読み方)、女の子は「葵」(あおい)が2年連続で1位を獲得。リオ五輪の開催年だったこともあり、体操の内村航平選手の「航平」は昨年の312位から41位に躍進した

▼名前はその時々の世相や流行を反映して大きく変わってきた。とはいえ、命名とは文字通り、小さな「命」に名前を授けることであるから、名前に込めた親の思いは不変だろう

▼寛斎さんの次女、女優の未来さん(42)は若手時代のインタビューで「名前は気に入ってます。新世紀に向けて(父は)素敵(すてき)な名前を準備していたんですよね」と語っている。名前は、親から命の次にプレゼントされたもの。どうか、どの子にも幸多き「未来」が待っていますように。(稲嶺幸弘)