■柳沢協二氏(元内閣官房副長官補)

 20年たっても返還が進んでいない背景には計画に根本的な矛盾があるからだ。

柳沢協二氏

 20年前に普天間飛行場の返還を決めたのは米軍の戦略だ。冷戦終結後、ヨーロッパと東アジアの10万人の米軍駐留兵力を維持する方針があり、沖縄は一番大きな拠点地だった。沖縄の基地を安定的に維持するには過重な負担を軽減する必要があり、問題が多かった普天間が対象となった。

 その戦略の前提が今、崩れている。米軍は前方展開のプレゼンスを減らす方向にかじを切った。だが、日本政府は20年前と同じ発想で政策を維持している。

 20年前と比べ中国が海洋進出を強めているが、あくまでも海洋秩序を巡る対立で、基本的なプレーヤーは海、空軍だ。海兵隊の出番はない。つまり中国の海洋進出を止める抑止力は、海兵隊にはない。

 日米ガイドラインでも離島防衛は自衛隊の任務と明記している。2018年度には陸上自衛隊に水陸機動団をつくり、海兵隊機能を持つ。九州北部から尖閣をにらむ部隊ができる。ますます米海兵隊が沖縄にいる理由はなくなる。

 このように前提が変わったにもかかわらず日本政府が名護市辺野古への新基地建設計画を維持するのは、歴代政権の流れをいまさら変えられないというのが本音だ。計画を変更するには政治のリードが必要だが相当なエネルギーが必要で、米側から発信しない限り日本から変わることはない。その意味で沖縄が直接米側に訴えかける意味はある。

 米大統領選で勝利したトランプ氏が言う世界の警察をやめるという意味は、軍事紛争に介入しないということだ。仮に日中間で尖閣諸島を巡り衝突が起きても巻き込まれたくないというのが米国の本音だ。

 基地反対の意見が多い沖縄で基地を存続させることは米国にとっても合理的ではない。基地への怨念がアジア政策の要の嘉手納飛行場まで波及すれば、日米同盟の危機につながる。トランプ氏の当選で、これまでの計画などを変える条件が出てきたのは事実だ。だが、明るい展望が開けるという期待を持ってはいけない。

 今まで以上に冷淡で沖縄に目を向けない可能性がある。沖縄から声を上げ続けることが重要だ。(聞き手=政経部・大野亨恭)