離島フェアに行くのが毎年の楽しみだ。居並ぶ特産品の中でも、「塩」の多様性にはいつも目を見張ってしまう。

ボーダーインク・1512円

 『琉球塩手帖』によると、沖縄では100種類を超える種類の塩が作られている。世界では岩塩と湖塩(湖から採れる塩)が生産量の7割を占めている。しかし沖縄ではいずれも海水を原材料とし、面積あたりの生産量も他を圧倒しているという。世界的にもまれな塩の一大生産地だと言えるだろう。

 1972年、日本政府が塩の専売制を実施したことにより、日本のいたるところにあった自然塩の製塩所は閉鎖を余儀なくされ、政府が認めた「食塩」だけが食卓に上ることになる。

 このことに真っ向から対峙(たいじ)していったのが、「粟国の塩」で知られる小渡幸信氏をはじめとする、県内外の有志らだった。彼らの熱心な活動により、97年に専売制は廃止された。離島フェアで各シマの塩が手に入るのは、彼らの並々ならぬ尽力があってのこと。自然塩復興の拠点となった沖縄は、いわば「塩の聖地」でもあるのだ。

 だがこうした歴史的経緯や、沖縄の塩の魅力はあまり知られていない。ソルトコーディネーター協会の代表理事である著者は、それらを伝え残したいという思いから本書を著した。

 塩づくりとひとくちに言ってもその製法は多種多様である。どこから海水をくみ上げるか、どうやって濃縮させ、塩を生み出していくのか。青山志穂さんは、職人たちの試行錯誤を丁寧に聴き取って、圧巻のルポルタージュとして結晶させたのである。

 それぞれの塩の特徴についてもリポートは詳細だ。雪玉のようにまんまるの粒、ピラミッド型の結晶など、形状は写真で見せて、味わいはチャート式で示すなど、目で見てわかるような編集を心がけた。個性的な塩を生み出す現場の努力と、その魅力を広く伝えたいという思い。食卓のひと皿に込められた情熱に気付かされる名著である。(喜納えりか・ボーダーインク編集者)