年金支給額を抑制する新たな仕組みを盛り込んだ「年金制度改革法案」は参院本会議で審議入りした。

 与党は今週、参院厚生労働委員会で審議を本格化させ、国会会期末の14日の本会議で成立させる方針といわれる。

 衆院の審議で、政府は「将来の年金水準確保法案だ」と強調、民進党など野党は「年金カット法案」と批判。議論はかみ合わず、審議が深まったとはとてもいえない。

 暮らしに大きな影響を与えるにもかかわらず、衆院で「強行採決」され、国民へ理解を求める説明も不十分だ。

 これを象徴しているのが安倍晋三首相の「私が述べたことをまったくご理解いただいていないようであれば、こんな議論を何時間やっても同じですよ」との答弁である。高齢者の不安や疑問に向き合った態度ではない。

 法案の柱は二つ。支給額の改定ルールを見直し、現役世代の賃金が下落した場合は年金も必ず減額する。

 少子高齢化の進展に合わせ、支給額の伸びを毎年約1%ずつ抑える「マクロ経済スライド」を強化する。年金だけで暮らす高齢者にとっては厳しい内容である。

 これで高齢者が生活できる持続可能な年金制度になるのか。厚生労働省によると、2014年度の国民年金の平均月額は5万4497円。この金額で家賃や生活費を賄うのは困難に違いない。

 65歳以上の高齢者世帯で生活保護を受給している世帯が8月時点で全体の5割を超え、過去最多となっていることも高齢者の暮らしの厳しさを示している。

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 法が成立すれば、沖縄はさらに深刻な立場に追い込まれるだろう。

 沖縄戦後、米軍統治下に置かれた影響もあって、長く年金制度の枠外にあった。国民年金で9年、厚生年金で16年も導入が本土に遅れた。

 その結果、厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、14年度末現在、沖縄の国民年金は5万1874円で全国平均に比べ約2600円低い。厚生年金の平均月額も12万6253円で、同じく全国平均に比べ約2万1千円低い。

 制度の遅れを埋めるため、特例で追納が認められたが、生活に追われ、保険料を納めることができず、無年金・低額年金者も多い。

 この世代の高齢者が突然、貧困に陥ったわけではない。県民所得の全国最下位が示すように、世代間の貧困の連鎖からなかなか脱却できないのが実情だ。

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 参院では、与野党とも自説に拘泥して相手を攻撃するばかりでなく、建設的な論議を深めてもらいたい。

 すべての人が老後も安心して暮らせるような「最低保障年金」の議論も必要ではないか。無年金・低年金者への目配りも忘れないでほしい。老後の安心は年金だけでなく、医療、介護、福祉、雇用などさまざまな要素が絡み合っている。社会保障制度を財政的に安定させるための「社会保障と税の一体改革」は、事実上破綻しているが、再構築の論議をすべき時だ。