好きな監督との出会いは、その作品の魅力をうまく語れる洞察力と語彙(ごい)力がもっと自分にあればと、のた打ち回る瞬間だ。

「永い言い訳」の一場面

 一人の男が、自分の劣等感や自尊心に子供のように執着し、他者を傷つけるに任せた結果、妻を失う。彼女はうっとうしいだけの存在だったので泣けないのだが、失ってから出会うさまざまなものから男は改めて妻の思いに気付く。「もう遅い!」とスクリーンに毒づきながらも残された者の再生が愛をもって描かれる様は心地よく温かい。

 誰もが、人には見せたくないと願う黒くうごめく部分をほんとにうまく描く。男の優越感と劣等感のはざまでもだえる様の描き方は辛辣(しんらつ)だが、突き放さない、ささいな積み重ねは正も負も両方にあると気付き、何げない日常がほんとにいとおしくなる、そんな作品。(スターシアターズ・榮慶子)◇サザンプレクスで上映中