2012年11月17日、旧大宜味村役場庁舎の米寿祝いに私はいた。人間と同じように、この建物は多くの人々からトゥシビーを祝福されていた。私はこのような地域に愛され続ける長寿命の建物を造りたいと思うと同時に、この建築に無性に引き寄せられていった。

沖縄建設新聞・1300円/くにし・としひで 1949年生まれ、沖縄市出身。琉球大卒。総理府沖縄開発庁、農林水産省などに勤務。「爆音、轟く」が第33回新沖縄文学賞受賞。「とぅばらーま哀歌」が第53回農民文学賞受賞

 著者国梓としひでも40年前の公務員時代、偶然見たこの洋風の建物に感動していた。一昨年沖縄建設新聞から連載の話があった時に、年月を超えこの建物の印象が脳裏を掠(かす)めたそうである。それほど強い衝撃があった。そしてこの建物を設計した建築家清村勉に思いを馳(は)せ、この本を書いてみたくなったのである。

 国梓は、清村の故郷熊本を訪ね歩き、親戚や関係者への取材、文献や資料等を重ね合わせ、その生きざまを生き生きと描いている。また、戦前戦後の沖縄の情勢、建築物や町並み、大宜味大工をはじめ国場幸太郎や大城鎌吉、金城賢勇等の沖縄建築界を牽引(けんいん)した人々と交友関係等を通して、沖縄の近代建築界の時代の流れも興味深く綴(つづ)っている。

 清村は当時日本でも普及していなかった鉄筋コンクリート建築を初めて沖縄に導入した人物である。台風や白アリの被害に強く耐火性のある鉄筋コンクリートは、未来の沖縄を象徴する建物になると信じていた。その予想通り、90年経(た)った現在の沖縄では80%以上が鉄筋コンクリート建造物へと成長している。清村の沖縄への功績が、我々の生活文化の礎となっていることが本書からみえてくる。

 建築家として入念な現地調査、工法と材料の吟味、志を共有できる大工との出会い。そして、住民も参加した施工。さらに長寿の村大宜味村の人も建物も大事にする精神が、結果として人々に愛され大切に使われる長寿命建築物・旧大宜味村役場庁舎を生んだのである。今年10月には国の重要文化財指定されることも決まった。建築に携わる人だけではなく、沖縄の近代に興味ある方にもぜひ読んでほしいと推薦する一書である。(根路銘安史・建築家)