「子どもたちは虐待されるためではなく、抱き締められるために生まれてきた」。漫画タイガーマスクの主人公「伊達直人」名で、児童養護施設へランドセルを最初に贈ったと名乗り出た会社員の河村正剛さん(43)は語った

▼2010年のクリスマスに河村さんがとった行動は、瞬く間に全国に広がり「タイガーマスク運動」と呼ばれた。県内でも匿名による贈り物が相次いだ

▼河村さんは母子家庭で育ち、その母親も幼い頃亡くし、小学校時代はランドセルが持てずに手提げ袋で通った経験がある。自分のような思いをさせたくないと、19年前から養護施設の支援を続けている

▼匿名から実名公表に踏み切ったのは、養護施設退所後の支援に関心を持ってほしかったからだという。退所後も就職や進学など、子どもたちを待ち受けるハードルはたくさんある

▼親に抱き締められることなく、虐待や貧困などを背景に養護施設や里親に預けられる子どもたちは多い。県内8カ所の養護施設には321人が入所、里親に預けられている子は142人(今年3月末)

▼河村さんは「支援しているのは普通の人だと知ってほしかった」とも言う。普通の人が関心を持ち、支えることが社会的な広がりにつながっていく。一人一人は小さく弱いかもしれないが、集まれば大きな力となる。(玉寄興也)