安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が、首相の地元・山口県と東京での2日間にわたる会談を終え、声明を発表した。

 北方四島での「共同経済活動」に向けた協議開始の合意が強調される一方、期待された領土問題で具体的な進展はなかった。

 共同記者会見でプーチン氏が示したのは、経済を重視する姿勢である。領土交渉の誘い水とはいえ、経済協力中心の会談だったという印象は拭えない。

 首相とプーチン氏が集中的に議論した共同経済活動は、日ロが合弁事業を行う構想だ。漁業、養殖、観光などの分野を想定している。

 北方四島に日本の資金と技術を取り入れたいロシア側が強く求めてきた経緯がある。自国の法律に基づく実施を前提とするロシアと、ロシアの施政権を認めるわけにはいかないとする日本との間で駆け引きが続いていた。

 今回、協議入りで折り合ったのは主権問題を棚上げした上で「特別な制度の下で」の交渉である。

 ただ主権を損なわない形で協力の枠組みを見いだすのは難しく、協議は難航が予想される。

 両首脳はエネルギー分野や医療、極東開発など「8項目の経済協力プラン」でも合意している。民間も含めた日本側の経済協力は3千億円規模となる見通しだ。

 首相は共同経済活動の着実な実現を通じて領土問題の打開を図りたい考えのようだが、島の開発が逆にロシアの実効支配の強化につながらないか懸念も残る。  

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 択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島は「日本固有の領土」であり、ロシアによる支配は「不法占拠」だというのが日本の主張だ。

 ロシアの立場は、4島のロシア帰属は第2次大戦の結果で、日本に返還すべき領土は存在しない。

 5月にロシアのソチで開かれた首脳会談で首相はこれまでとは異なる「新しいアプローチ」での領土問題解決を提案した。

 プーチン氏が歯舞、色丹の2島引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言の有効性を認めていることから、落としどころとして「2島返還方式」の実現を探ってきたのだ。

 しかしその間に状況は微妙に変化。発表された声明には4島の帰属問題に関する記述は盛り込まれなかった。

 領土問題前進への期待が高まっていただけに、失望もまた大きい。

 経済協力以外の新しいアプローチについての具体的な言及が必要だ。

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 両首脳は北方領土の元島民がかつての故郷を訪ね、自由に墓参りできるよう、往来手続きの簡素化を進めることでも合意している。

 元島民は、平均年齢が80歳を超えており、当然の心配りだ。

 戦後71年、お隣同士でありながら、いまだに平和条約が結ばれていないという状況はいびつである。

 政府には粘り強い外交交渉と戦略の再検討を求めたい。