平均年齢70歳以上のコーラス隊「One Voice」(ワンボイス)のメンバーそれぞれの活動への思いや、家族との心温まるエピソードに私は自分自身や両親、祖父母の姿を重ねてしまった。本書は、いろいろな人生経験を積んできた人たちが情念を失わず、新たな人生に真っ向から挑戦する物語である。

ポプラ社・1512円/むとう・しんじ 電通クリエーティブ・ディレクター、プランナー。1992年、電通入社。広告ほか商品や新規事業の企画設計、コンテンツ制作などに携わる。著書に「アタマの体質改善」

 シニア世代のリタイア後の生き方を描くというより、今を輝かしく生きる奮闘が綴(つづ)られ、世代を超えて引き付けられる。ワンボイスはあえて自分たちの世代の歌にこだわらず、若者や子どもたちが共感できる歌に挑む。それは「歌は人の心を結ぶ」という強い信念があるからだ。

 彼らはアーティストとして舞台に立ち、緊張と、その後訪れる達成感と充実感に浸る。それは、生きる舞台そのものだ。心はいつも若く、明るく、はつらつと歌うことをモットーにしたステージは、年齢を重ねてきたからこその味わいが感じられ、聞く人の心を打つ。

 人の心の距離を近づけてくれるワンボイスの歌う曲の一つ「人にやさしく」に、「ガンバレ」という歌詞がある。一斉にこぶしを高々と突き上げて力強く歌う姿は「今できることを精いっぱいやりなさい」と背中を押してくれているような気持ちにさせてくれる。

 初めは1曲仕上げるにも相当の苦労を重ねてきたが、いつしか誰かが歌い始めると誰かがハモり、いつの間にかみんなが歌いだす。歌い終えるとハイタッチ。自分スタイルで音楽を楽しみ、枠にとらわれず生きる精神はまさにロックンロールだ。「ワンボイス」のワンはウチナーグチの「ワン(私)」の意味も込められているという。自分自身の声に耳を澄ませて素直に声に出すことで、人と共感し、新しい世界を創るメッセージのような気がしてならない。

 ワンボイスの掲げる目標は、4年後の東京五輪で歌うことだという。未来への可能性を信じて、階段を一歩ずつ上がっていく彼らの姿に、エールを送りたくなる。(長嶺花菜・タレント)