音楽家 稲福高廣さん(24)=那覇市出身

 人懐っこい笑顔に、優しく朗らかな人柄がにじみ出る。「人付き合いにおいて、壁をつくったことがないんです」。出会う人に誠実に向き合う真摯(しんし)さが、音楽を究めるために欠かせないと考えている。

「音楽に触れやすい沖縄の環境で育ったことも今に影響している」と話す稲福高廣さん=都内の音楽スタジオ「NOAH」

 東京音楽大学で作曲を専攻している。しかし、その活動は、音大生の枠を超えている。

 加藤登紀子、森山良子など有名アーティストの歌の作曲、アレンジを手掛け、まだ明かせないが来年には大物歌手のコンサートのオーケストラアレンジも任されている。最大級の音楽イベント「サマーソニックフェスティバル」や、テレビの「ミュージックステーション」でキーボード演奏も担当する。

 「アーティストの魅力を最大限引き出すためにどうするかを考えている」。人それぞれの持ち味に応じた対応をするには、「何より自分の人間性を高める努力が欠かせない」と思いを語る。人間性ができてないと、伝わる音楽はできない-。出会いを大切にし、壁を設けず、誠心誠意の対応を心掛けるのもそのためだ。

 音楽家の家庭で育った訳ではない。引き込まれたきっかけは、小学生のときに聞いたジブリ映画「千と千尋の神隠し」のサントラだった。「いつも何度でも」を自ら楽譜におこした。13歳からピアノを習い、半年で県内外のコンクールで上位入賞。上達は早かった。

 中学、高校では一転、スポーツに打ち込んだ。高3で将来の夢を突き詰めて考えると「やはり作曲家になりたい」との思いに至り、音大への進学を選んだ。

 大学では服部克久氏ら著名な作曲家に師事。みせる演奏を目指して「E&R ORCHESTRA」を結成し、代表として企画・運営に携わる。その上、学外での仕事もこなす。「音楽家になるとはどういうことか、多くの出会いから学んでいる」と充実ぶりを語った。(東京報道部・宮城栄作)=連載・アクロス沖縄<31>

 いなふく・たかひろ 1992年、那覇市生まれ。小学3年から金管バンドや合唱で音楽に親しむ。2012年から東京音楽大学に在学。日産「スカイライン」のCM曲の制作サポートを機に音楽業界へ参入。有名なアーティストや音楽イベントでの作曲、編曲、演奏を数多く手掛けている。