創業50年。那覇市松山の超有名食堂「三笠 松山店」が14日、移転した。国道58号沿いで24時間営業を続けてきた同店は、沖縄県民や観光客が1日に少なくとも300人以上が訪れるという人気店だ。移転先は元の場所から徒歩1分の路地裏。移転の舞台裏やその影響はあるのだろうか? オーナー夫妻に聞いた。(デジタル部・與那覇里子)

国道58号沿いにあったころの「三笠」
 

 代表の桑江良正さんは3代目社長。妻・明子さんの母が1966年ごろ開業した三笠を76年ごろに買い取り、店を続けてきた。桑江さんは今回の移転を機に引き継いだ。

 カウンター5席から始まった店は、圧巻のボリュームなのに安く、どこかホッとする「お母さんの味」を武器に、テーブル40席を増設するまでに成長した。厨房に冷蔵庫を置くスペースがなく、山盛りのキャベツや白菜も客席にドサッと、セルフサービスの水は大きなキーパーで入り口に無造作に置いた。家にいるような、気取らない雰囲気も人気の要因となった。

三笠の前店舗の店内 薄暗い雰囲気も特徴だった

 沖縄ブームを背景に、地元の人気食堂としてテレビで取り上げられ、多くの観光ガイドブックにも掲載された。明子さんは「圧倒的に男性客が多かったのが、ここ10年で外国人、女性、家族連れが増えた。男女比は7:3に変わって、今ではフーチャンプルーとすき焼きを一度に注文して一人で食べていく女性の常連さんもいるほどです」

 借りていたビルの老朽化で、立ち退きを告げられたのはことし5月中旬。桑江さんは「いずれ立ち退かないといけないと思っていたが、あと10年はやりたかった」と残念がる。

 店内に「移転します」の張り紙をしたものの、初めての店の誰も経験がない移転作業には時間がかかり、オープンの日を告げられないまま、11月上旬に店舗を閉めることに。明子さんは「50年分の荷物の片付けもしなければならいし、オープン前の一週間はほとんど眠れなかった」。

移転を告知した前店舗の張り紙 新装開店の日付は告知が間に合わなかった

 物件探しも時間がかかった。常連さんのためにも近くに移転したいと思っていたが、国道58号沿いでは探せず、偶然空いた今の物件に新店舗を構えることになった。

三笠・松山店の新店舗

 移転した新店舗に入ると、席数は31に減ったが、照明、テーブル、メニュー表は前店舗の時と変わらず、面影は残る。「はやっていたお店のものは縁起がいい、と建設関係の会社の人たちに言われ、まだ使えそうなものはそのまま持ってきました」と明子さん。前店舗のように、厨房の中がよく見えるのも変わらない。「料理を作るおばちゃんたちとの楽しい会話がいいと言ってくれるお客さんも多い。アットホームにコミュニケーションをとれるように設計には気をつけました」

きれいでおしゃれになった新店舗の店内