国に駆り出され、戦争の犠牲になった人々の遺骨を持ち帰るのは国の責務である。

 政府は米国と共同で戦没者の遺骨収集に乗り出す方針を固めた。来年度から、日米で激戦が繰り広げられた太平洋地域を中心に実施する。

 日米の情報が複眼的に活用でき、遺骨収集に力を発揮するのは間違いない。遺族の高齢化を考えると、残された時間は少なく、遺骨の収集作業を一刻も早く進めてほしい。

 日本とともに遺骨収集に当たるのは米国防総省が設置している「戦争捕虜・戦中行方不明者捜索統合司令部」(DPAA、米ハワイ州)。同機関は「全兵士を祖国へ帰す」を合言葉に、戦史資料などに基づき、米兵の遺骨を発掘。DNA鑑定し、遺族に引き渡す任務を負っている。科学的蓄積も豊富で遺骨収集に果たす役割が期待される。

 共同調査の対象は、フィリピンやソロモン諸島、硫黄島(東京都小笠原村)などを想定し、調査が軌道に乗れば範囲を広げる考えだ。

 政府の遺骨収集の取り組みは遅きに失し、継続性に欠けていたと言わざるを得ない。

 政府は1952年の国会決議を根拠に75年度まで3次にわたって海外の戦地で日本兵の遺骨収集を行ったものの、民間人について手薄のまま遺骨収集が事実上途切れた。

 国の責務として継続していれば生存者からの聞き取りや現地からの情報がいまより格段に容易だったはずである。

 日米の合同調査には、現時点で沖縄が対象に入っているかどうかはっきりしないが、当然入れるべきだろう。

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 第2次大戦による戦没者の遺骨で収集できていないのは、10月末現在、112万6千柱に上る。

 沖縄では3月末現在、収骨数は18万5121柱で、まだ2905柱が収骨されていないとみられる。

 4月1日に戦没者の遺骨収集を国の責務、と明記した「戦没者遺骨収集推進法」が施行された。

 だが、厚労省はDNA鑑定の検体を歯に限り、同時に頭蓋骨や骨盤などが1体分として残る遺骨を鑑定の基準としているため、特定への進展はみられない。

 県内で保管中の600柱余りのうちDNA鑑定の対象はわずか87柱で、これまでに特定されたのは日本兵4人にとどまる。米国や韓国では大腿(だいたい)骨や腕の骨などの四肢骨の鑑定も対象という。沖縄では多くの民間人が犠牲になった。鑑定対象を広げ、一人でも多くの遺骨を遺族の元へ帰すのが国の責務だ。

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 日米共同による遺骨収集は2014年ごろ、米側から打診されていたという。なぜ、この時期に浮上してきたのだろうか。オバマ大統領とともに真珠湾を訪問する安倍晋三首相がハワイ滞在中に言及する可能性もある。遺骨収集は日米関係が見通せないトランプ次期大統領の就任前に、同盟強化の狙いがあるとの見方も出ている。

 それでも、戦争で亡くなった肉親を片時も忘れたことがない遺族のことを考えると、このような人道的な面でこそ日米は協力してほしい。