仕事のために不幸になったり、命を落とすことはあってはなりません-。過労自殺した電通社員の高橋まつりさん(当時24)の母美幸さん(53)が、娘の命日につづった

 ▼すべて夢であってほしいと思い続ける日々、娘を助けられなかったと悔やむ思いに胸が締め付けられる。冒頭の言葉は、違法残業がはびこる労働環境をただしてほしいという叫びでもある

 ▼厚生労働省は緊急対策で、違法な長時間労働を繰り返した企業名の公表対象を広げた。公表基準を月100時間超の違法残業から80時間超に引き下げたほか、過労死や過労自殺があった企業も対象に加えた

 ▼「過労死ゼロ」を目指すのは当然だが、企業名公表は複数の都道府県に事業所を持つ大企業が対象で、実効性に疑問も残る。社会的制裁という意味では、一定の効果も見込めるだろうが、目にみえる改善につながるかは不透明といえる

 ▼長時間労働の実態は、労働者が声を上げにくい中小零細企業でも深刻だろう。外部からはみえづらい企業内の“あしき慣習”など違法な労働環境がどれだけあるのか。労働行政がメスを入れるべきところは多岐にわたる

 ▼企業の体質改善や環境を変えていくには小手先の対策で終わってはいいはずはない。美幸さんは手記でこう締めくくる。「日本の働く人全ての人の意識が変わって欲しい」(赤嶺由紀子)