中山義隆石垣市長が、陸上自衛隊配備の受け入れを表明した。市議会12月定例会の一般質問で「配備計画に挙がる市内4集落の住民と面談の上で判断する」との意向を示した直後であり、答弁に背くものだ。一部地域の賛成派住民と会っただけで一方的に容認を表明するやり方は、とても納得できない。

 石垣市への陸自配備の是非は、2014年市長選でも争点の一つだった。当時、中山氏は陸自の積極誘致を否定し「条件などを市民にオープンにして議論する」と主張。当選後には「市民から必要との声が上がれば、視野に入れる」と住民投票実施の可能性にも言及していた。

 しかし今回の表明は、そうしたかつての言葉とは全く相いれない。

 受け入れ理由の一つとして中山氏は「(配備の)詳細な計画は市も分からない。手続きを進めることで具体的な計画が出れば、情報を開示し議論を進められる」とするが、配備の是非を議論するために配備を受け入れるという論理は、本末転倒だ。

 自衛隊配備によって住民生活や自然環境にどのような影響が生じるのか。配備を経験したことのない市民が不安に感じるのは当然で、本来なら十分な情報開示をした上で是非が判断されるべきだ。

 実施可能性に触れていた住民投票についても中山氏のぶれが目立つ。10月に市が開いた公開討論会での市民アンケートで「配備反対」が46%と、「賛成」27%を大きく上回っているが、「国防や安全保障を住民投票で決めるのはそぐわない」「従うかどうかは条例の中身で決める」など否定的な見解を繰り返している。

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 先島諸島の防衛を巡っては、防衛大綱の策定過程で03年、防衛庁(当時)が中国と台湾の軍事紛争への対処方針を検討。日米の台湾支援阻止を狙う中国軍による与那国、宮古、石垣の3島への限定侵攻を想定し、陸自の事前配置などを決めた経緯がある。

 防衛省は11年度からの防衛大綱と中期防衛力整備計画で島しょ防衛強化を打ち出す一方で、市民らからは、中国との軍拡競争で緊張感を高め、逆に紛争を引き起こす要因となるのではないか、との懸念は根強い。

 中山氏は、これらの懸念の声にどれだけ向き合ってきたのか。「情報を得るために受け入れる」というのは市民を置き去りにしたというほかなく、政策決定過程からみても筋が通らない。

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 戦後70年の節目を迎えた15年、中山氏は「尖閣諸島戦時遭難事件」の慰霊祭を尖閣諸島で開催するための上陸許可を政府に申請したことがある。しかし、遺族会は「周辺国との紛争の火種になりかねない」と上陸を拒否した経緯がある。

 その遺族会は「周辺国との緊張を高める」と今回の配備計画にも反対する。「いったん紛争が起きれば住民生活は崩壊する」との慶田城用武会長の言葉は、過去の戦争体験に基づいた当然の懸念だ。

 中山氏は住民生活を守る市長として、市民への説明責任を果たす義務がある。