昨年暮れ、宜野座村城原の泉忠信さん(86)と、東村高江の安次嶺現達さん(58)の自宅を訪ねた。

 オスプレイの飛行訓練にさらされ、日々の暮らしが脅かされている所だ。

 宜野座村城原の泉さんの自宅は、キャンプ・ハンセン内の「ファルコン」と呼ばれるヘリパッドから約380メートルしか離れていない。

 昨年12月には連夜オスプレイが自宅真上を旋回してつり下げ訓練などを行った。

 泉さんはオスプレイが近づくと、2階建ての部屋中の電気をつけ、カーテンを開ける。パイロットに人間が住んでいることを知らせるためだ。墜落の恐怖からである。

 昨年10月からは住居の目印となる「航空標識灯」が設置されたが、自宅付近を避けるようにはみえない。ぜんそくの持病がある泉さんは体調を崩した。

 金属がきしむような不快な爆音に加え、激しい下降気流で粉じんが舞い上がり、燃料のにおいが漂う。窓ガラスが揺れ、孫が恐怖に襲われ、母親に抱きついてきたこともある。

 東村高江の安次嶺さんは妻雪音さん(45)との間に子どもが6人いる。高校生の2人は村内に高校がないため自宅を離れた。うっそうとした木々と小川が流れる自然環境の中で4人の子どもと暮らす。

 子どもたちを伸び伸び育てたいと県内各地を探し回り、たどり着いたのが高江だった。14年前のことだ。子どもたちは小川で水遊びしたり、クワガタムシやカブトムシを捕ったりしてヤンバルの自然を楽しんだ。

 そんな日常が一変したのは2012年に普天間飛行場にオスプレイが配備され、13年と14年に2カ所のヘリパッドが完成してから。自宅から約400メートルしか離れていない。

 自宅上空が飛行コースに当たり、昨年7月には連夜、低空飛行でオスプレイが迫ってきた。自宅が揺れ、子どもたちは眠れない。体調を崩し、学校を休んだ。隣の国頭村に一時避難したが、もうここには住むことができない、と考えるようになった。

 泉さん、安次嶺さんの願いは一つ。「人間らしい普通の暮らしがしたい」。それだけである。

 耐え難い被害が現実に出ているのに、それを放置する政府は、政府として失格だ。両地域について直ちに実効性のある対策を打ち出すよう強く求めたい。

 辺野古沿岸域に大型コンクリートブロックを投下した15年1月以降、音響に敏感なジュゴンが確認されていない。名護市安部のオスプレイ墜落現場付近は、3頭のうち2頭の生息域である。

 政府は、大浦湾におけるジュゴン調査、オスプレイを前提とした北部訓練場の環境影響評価(アセスメント)の再調査を実施すべきである。

 目の前の被害に目をつぶって埋め立てに狂奔してはならない。

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 世界は第2次世界大戦後に形成された戦後秩序が崩れ、冷戦後の新秩序も形成されないうちに、新たな混迷の時代に入った。

 自由や民主主義をリードしてきた米欧で「分断と対立」が表面化し、「憎悪と不寛容」の政治が頭をもたげてきた。世界各地でテロがやまない。

 米国では「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領が20日に就任するが、国内の分裂状況は収まっていない。先行きの見えない不透明感が世界を覆っている。

 沖縄もその影響から完全に免れることはできないであろう。国防長官に元海兵隊大将のマティス氏が起用される見通しである。基地政策で予測不能のトランプ新大統領とのコンビ誕生で基地問題にも少なからぬ影響が出るのは避けられないだろう。

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 沖縄の先人たちは、国策に翻弄(ほんろう)されながらも人間としての尊厳と「自治・自立」を求め、困難な道を切り開いてきた。

 愚直で、寛容性に富み、ユーモアを好みつつ、抵抗の精神を失わなかった多くの名もない先人たちに学びたい。

 「危機」を「機会」に転換させる知恵と行動力が、いまほど求められているときはない。