県立第二中学校と那覇高校の卒業生らでつくる城岳同窓会に、「A氏奨学金」という返済不要の給付型奨学金がある。

 本土の大学に進学し経済的に苦しい思いをした同窓生の1人が、1億円を寄付し創設された制度だ。

 寄付にあたっての条件は寄付者を匿名とすることと、同じような境遇の生徒に奨学金を渡してほしいという二点だった。  

 県外大学進学者へは月4万円、県内大学進学者へは月2万円を1年間支給。2009年以降、これまで20人の大学生活を支えてきた。

 沖縄は離島県で、さらに多くの小さな離島で構成されているため、自宅から通える大学がない、あるいは少ないというハンディを持つ。

 大学の年間授業料は国立でも54万円、私立では平均86万円かかる。親元を離れて暮らすとなると、それに家賃など生活費がプラスされる。1人当たり県民所得が全国最下位の沖縄では、大学進学費用は家計に重くのしかかる。

 苦労した経験が根っこにあるのだろう。「子どもの貧困」がクローズアップされた昨年来、企業をはじめ、大学、自治体などで給付型奨学金への取り組みが加速している。

 沖縄国際大学では今春から離島や遠隔地出身の学生向けに授業料の半額免除制度などをスタートさせる。

 竹富町では町内就職を条件に月額5万円の給付型奨学金を設けた。

 未来へバトンをつなごうとの思いが伝わる心強い支援だ。

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 給付型奨学金は県でも取り組みが始まっている。

 県子どもの貧困対策計画に、県外難関大学への進学を推進する給付型奨学金制度が盛り込まれ、2017年度から月額最高7万円を25人に支給する予定だ。都道府県レベルでは踏み込んだ施策である。

 国も18年度から住民税を課税されない低所得世帯の大学生などを対象に給付型奨学金を導入する。国立か私立か、自宅生か下宿生かを基準に月2万~4万円を給付するという。

 これまで日本の奨学金は貸与型がほとんどだったことを考えると前進には違いない。

 しかし住民税非課税世帯から大学などに進学する人は毎年6万人と推定されており、新たな制度では、その3分の1しかカバーできない。

 能力がありながら進学をためらう生徒を後押しするには、県の制度も、国の制度もさらなる拡充が必要だ。   ■    ■

 沖縄の子どもの貧困率が29・9%と、全国の倍近い深刻な状況であることが明らかになったのはちょうど1年前。県は「子どもの貧困対策元年」と位置付け、民間も加わって貧困解消に向けた機運が盛り上がった。

 何とかしたいという思いが、子ども食堂や無料の学習塾につながったのは、とてもすばらしいことだ。

 真価が問われる2年目である。頑張る子どもたちを応援していくというメッセージを、それぞれの場から発信し続けよう。